ゲームセットは聞こえない～超能力野球奇譚～

7回裏 廃部か甲子園出場か、運命の決勝戦 VS神戸ポートタウン大付属

423球目 兵庫県下162校は甲子園出場できない

　7月10日に兵庫県予選が始まった時点で、164校に甲子園出場のチャンスがあった。

　だが、1か月弱を経て、甲子園出場を狙えるのは2校に絞られた。

　4年連続甲子園出場を目指す私立神戸（こうべ）ポートタウン大付属。

　初出場を目指す私立浜甲（はまこう）学園。

　8月3日、その激闘を見んと、神戸ブルーオーシャン球場に3万6千人が押し寄せた。プロ野球の試合よりも客が集まっている。

＜浜甲学園＞

1右　山　科（やましな）（3年）右投右打

2三　番　馬（ばんば）（3年）右投右打

3左　水　宮（みずみや）（1年）右投左打

4投　宅　部（やかべ）（2年）右投右打

5遊　津　灯（つとう）（1年）右投左打

6中　千井田（ちいだ）（2年）右投左打

7二　火　星（ひぼし）（1年）右投両打

8一　真　池（まいけ）（2年）右投左打

9捕　東　代（とうだい）（1年）右投右打

＜神戸ポートタウン大付属＞

1中　白木（しらき）（2年）右投左打

2捕　友永（ともなが）（3年）右投両打

3投　鮎川（あゆかわ）（3年）右投右打

4三　福口（ふくぐち）（3年）右投右打

5二　栄咲（えさき）（2年）右投左打

6左　大柴（おおしば）（2年）右投左打

7遊　北部（きたべ）（3年）右投左打

8一　鈴村（すずむら）（2年）右投両打

9右　中田（1年）右投両打

　ポートタウンの村下（むらした）監督は浜甲（はまこう）学園の変則的なオーダーを見て、重ねた両手の上にあごを乗せて考える。

「何だ、この打順は……。打率順か？　いや、打率順なら津灯（つとう）が1番になるはず。出塁率……、山科（やましな）の次に番馬（ばんば）はおかしいな。山科（やましな）、番馬（ばんば）、水宮（みずみや）、ハッ！」

　村下監督は眼鏡をかけ直して、福口（ふくぐち）と友永（ともなが）を呼ぶ。

「浜甲学園の打順はOPS順だ。長打のある上位3人を何としてでも抑えろ」

　OPSとは、出塁率と長打率を足した数値である。よく塁に出てホームランを打てる強打者は数値が高くなる。

「わかりました」

「うっす！」

　2人の頼もしい返事を聞いた村下はベンチに浅く座る。

「浜甲学園は強い、他府県の代表校と比べて遜色はない」

　彼は決して油断しない。どんな対戦相手であっても、データの隅々まで見て弱点を突くのだ。

（続く）