411球目 森脇工業の足が止まらない

 準決勝第2試合、先にしかけたのは森脇もりわき工業だった。



 1番の中迫なかさこがバントヒットで出ると、千井田ちいださん級の加速で2塁を盗む。2番の鳥森とりもりの送りバントは、オオミチバシリロードランナーの足が活きて1塁セーフ。すかさず、次の打者・野田のだの時に2盗する。



 野田が四球で出て無死満塁に。ここで4番の足手あしでに回る。



「グワキーン!」



 自分で発した打球音どおりに、猛烈な打球が左中間深々と飛んでいく。走者一掃の2ベースヒットで、一挙に3点が入った。



「俺達の相手は森脇もりわき工業かー」


「うちが走りまくったるやん」


「ウェル、ポートタウンはワザと点をギフトしたように見えますね」


「1点ならともかく、3点はないだろ」



 東代とうだいは首を横に振り、ポートタウンのベンチを指差す。



「ポートタウンの監督ボスは私とセイム似るブレインを持っていますよ」



※※※



 その後、試合は投手戦になる。足手あしでは前評判どおりに、ポートタウン打線を5回まで1点に抑える。ゴロの山を築き、マウンド上の躍動感が半端ない。大柴おおしばの方も毎回のようにランナーを出すが、ことごとくランナーを刺して点を与えない。



「初回の3点は撒き餌やね。大柴大柴さんはクイックモーション上手やけど、初回だけ緩慢かんまんなモーションやったから」


「ザッツライト、ミス・ツトー! スチール盗塁イージー簡単なイメージを持ったモリワキコーは泥沼にはまりました」


「でもよぉ、ポートタウン打線は1点しか取れてないぜ。絶好調の足手あしでをどう攻略するんだ?」


「それもデータでQ.E.D.証明済みでしょう」



 東代とうだいの予想どおり、ポートタウン打線は6回裏に牙をむいた。



(続く)

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