412球目 データ野球は容赦ない

 ポートタウンの先頭打者・友永ともなががヒットで出ると、足手あしでの右手が縮んで左手が伸びた。ロングサイドハンドの発動だ。



「ンゴオオオオオ!」



 声の割りに140キロ前半しか出ないが、角度のついたボールは打ちにくい。代打の川田かわたを三球三振で抑える。



 次の利根橋とねばしも2ストライクに追い込んだ。



 3球目は低めのストレート。これをピッチャー正面へバントしてきた。まさかのツーストライクからのバントで、長い左手がボールとじゃれて、利根橋とねばしをセーフにしてしまう。



 福口ふくぐちのバント失敗で2死1・2塁になる。ここで、ポートタウンは代打に左の北部きたべを送る。左ピッチャーに左バッター、変な采配だ。



 北部きたべはホームベース寄りに構える。これではインコースに投げにくい。



 森脇もりわき工バッテリーは外のスライダーを選択した。俺だってそうする。そして打たれた。



「ライト、ライト!」



 打球はライト線を抜ける2ベースヒットになる。2人のランナーが還って同点になった。



 その後、バントヒットや四死球や2ベースヒットが出て、ポートタウンは一挙6点を入れた。



「ポートタウンのバッターは、右バッターはアウトコース、左バッターはインコースをパワフルにファールかヒットしてきました。それを嫌がったバッテリーはアンコンシャスリー無意識に、右バッターにインコース、左バッターにアウトコースを投げることをチョイス選択したのでしょう」


「ハァ、やらしいチームだなぁ」



 正直言って、何も考えずに振り回すパワー馬鹿の方がありがたい。チーム全員が東代とうだいのように、クレバーな野球をしてくるなんて、嫌すぎる。



(続く)

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