374球目 最近ワニワニパニックを見かけない

 ワニワニパニックとは、穴から出てきたワニをハンマーで叩くゲームだ。それと刈摩かるま対策がどう結びつくというのか。



「穴から出てくるワニを叩いたら10点、大砲を叩いたら3点、犬を叩いたら1点、龍を叩いたらマイナス10点、幽霊を叩いたらマイナス50点ね」



 グル監が巨大ワニワニパニック装置の横に立って、ルールを説明してくれる。ワニ以外のラインナップがおかしい。



「3分間やった合計得点が1位やった人は、松阪牛ステーキをごちそうするわ」


「ステーキやとぉ!?」


「ステキやわー!」



 皆の眼の色が変わる。何としてでもワニをたくさん叩いて、点を稼がなければならない。



「トップバッターは水宮みずみや君ね。レディゴー!」



 中央の穴からワニが出てきた。叩く!



「ハハハ。たのしー」



 その声は鰐部わにべか。浜甲はまこうに負けてから協力する奴、多くないか?



 1番右の穴からボーダーコリーが出てきた。叩こう。



犬縞いぬしまっ!」


大縞おおしまや!」



 右から2つ目の穴から前髪の長い幽霊女が出てきた。叩かない、絶対に叩きたくない。



「ポポポポポ。叩かないのー?」



 女は恨めしそうに言って、穴の中へ引っ込んでいく。今度は両端でワニと大砲が出てくる。大砲を叩いて、ワニも叩く。



「ブー。マイナス10点です」


「えっ、これ龍? 色が似てるからわかりにくいな」


「ワニと龍を間違えるとは、愚か者ぉ!」



 突然、俺の頭上に小さい雲が出てきて、集中豪雨を喰らう。龍水りゅうすい監督の逆鱗げきりんにふれた俺は、シン・ワニワニパニックの最下位に沈んだ。



(続く)

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