327球目 連合チームは快進撃を終わらせない

 兵庫連合は3点を追って、9回表の攻撃にのぞむ。



「9番ピッチャー奥良おくら君」



 須磨すま海浜かいひん高校のグラウンドは陸上部とサッカー部が優先して使用するため、3人の野球部は浜辺に追いやられた。浜辺のランニングを繰り返していく内に、糸森いともり奥良おくらのコントロールが良くなり、スタミナがついた。



 彼女は兵庫連合の一員として勝ち上がり、来年の野球部の新入部員を増やしたいと思い、頑張ってきた。



 取塚とりつかのストレートに食らいつき、3球連続でファールにする。



 4球目は、ハチが止まる超スローカーブだ。



「ストラックアウ!」



 奥良おくらはバットを振らなかった自分の頭を小突こづく。



「1番ファースト朽神くちかみ君」



 朽神くちかみ須磨すま海浜かいひんの2年で、糸森いともり奥良おくらが卒業すると1人になってしまう。まだまだ先輩達と一緒に野球がしたいと思っている。



 バットコントールが巧みな朽神くちかみは、一二塁間へ流し打った。しかし、宅部やかべの守備範囲内だった。



「アウト!」


「2番ショート片和田かたわだ君」


「あと1人です、エブリワン!」



 東代とうだい浜甲はまこうナインに声をかける。



「クソ―。ここで終わってたまるか」



 片和田かたわだはベンチの夢野ゆめのをチラ見する。彼と夢野ゆめの尼崎あまがさき双葉そうよう高校の校舎の屋上で、3年間ずっと打撃練習し続けてきた。いつか広いグラウンドで練習するのを夢見てきたが、それはかなわない。だが、後輩のためにも、ここで終わらせてはいけない。



 取塚とりつかのストレートがど真ん中低めにくる。それを片和田かたわだはすくい上げて、センターへ運ぶ。ホームランになりそうな打球だ。



(続く)

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