3万PV記念おまけストーリー ホッキョクグマアイス

 兵庫連合との試合前日のノックは、かなりハードなものになった。



 さすがの俺でも3時間はキツイ、へとへとだ。



「ここで休憩にしますか、津灯つとうさん?」


「はい。それじゃ、15分休憩にしまーす!」



 俺達は日陰を求め、我先にとベンチへ駆けこんだ。



「みんなのために、ホッキョクグマアイス買ってきたわ。1人1個ずつね」



 グル監がクーラーボックスを開けば、アイスの山がまばゆい光を放っている。押し合いへし合いしながら、アイスをつかんだ。



 ホッキョクグマアイスは、白いクリームと小さな果実の粒のコラボ食感が、とても美味しい。体もひんやりできて、実にいい。



「あら? このアイス、当たり棒はなくて、当たり獣化みたいね。シロクマになれたら、もう1本もらえるわ」


「12人で食べたら、誰か1人ぐらい当たるやろ」



 番馬ばんばさんは一瞬でアイスを丸呑みした。



「あれ? 何か暑くなってきた……」


水宮みずみや君も? 実はあたしも」



 全身が燃えるように暑くて、今すぐ裸になりたい。とりあえずユニフォームを脱いで、アンダーシャツ1丁になるか。



「うわっ! 何じゃこりゃあ!?」



 俺の上半身は白い毛でびっしり覆われている。鼻がむずがゆいので触ってみれば、鼻の穴が広がり湿っていた。サッカーボールが入るぐらい腹が膨れて前に出てくる。アンダーシャツは破れてしまった。



「オー。ポーラーベアーですね」


「あっ、ちょっと恥ずかしい!」



 津灯つとうシロクマは胸を両手で隠している。妊娠したかのようなボテ腹は、そういう嗜好しこうないけど、ちょっとエロく見えるな。



「これ、いつまでこの姿なんですか? クッソ暑いんで、早く元に戻りたいんですけど」


「パッケージには30分弱と書いてるわね」


「ゲッ! 30分もシロクマって……」


「それだけ時間あったら、おまけのアイスもらいに行けるね」



 津灯つとうはシロクマになってもノリノリだが、こっちはもうこりごりだよ。この夏は、肥満化、ドラゴン化、シロクマ化で、変身しまくりだからな。



「カァー! 俺っちも当たりたかったぁ!」



 普段から口ばしがついている烏丸からすまさんがシロクマ化したら、キメラみたいになりますよ。想像したら、ちょっとおかしいな。



「すみません、監督。あたし達、おまけのアイス取りに行きます」


「ええよー。帰ってきたら、2人はノック30分延長ねー」


「ほな、水宮みずみや君、行こか?」


「おっ! うん」



 俺と津灯つとうはシロクマのワガママボディーを揺らしながら、駄菓子屋へ向かった。シロクマの姿をのぞけば、彼女とのデートみたいで悪くないな。



(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る