306球目 三振だけがアウトじゃない

「プレイボール!」



 球審の手が上がって試合開始だ。今日はかなり厚いから、守備の時間は短めにしたい。



 東代とうだいのサインにうなずき、外角低めアウトローにストレートを投げる。あっ、少し真ん中寄りになっちまった。



 朽神くちかみは甘い球を見逃さない。打球は俺の横を抜けてセンター前ヒットになる。



「あーあ。完全試合パーフェクト無安打無得点試合ノーヒットノーランも無くなったぁ」



 今日は摩耶まや戦以上に調子が良かったのになぁ。



水宮みずみや君、どんどん打たせてねー!」



 食堂のおばちゃんみたいな笑顔の津灯つとうが声をかけてくる。三振をたくさん奪いたいが、打ち取った方が早く終わるか。



 次の片和田かたわだはバントの構え。初球は見送り、2球目にバスターしてきた。打球は津灯つとうへのゴロに。



「セカン!」



 津灯つとうは捕ったらすぐに、宅部やかべさんへ送球した。宅部やかべさんが難なく捕り、ファーストの真池まいけさんへ鋭い送球。真池まいけさんは少しビビりながらも、ファーストミットでしっかり捕球した。これぞ、教科書通りの6-4-3のダブルプレー!!



「ナイスプレー!」



 俺は右手でグローブを叩いて拍手する。



「まだまだいけるよー」



 津灯つとう宅部やかべさんは水を得た魚みたいに、まだまだ元気だ。この二遊間の守備があれば、安心して投げられる。



 続く糸森いともりもサードゴロに仕留め、初回を0点に抑えられた。さぁ、俺達の長い攻撃の始まりだ。



(続く)

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