53球目 ゲームプレイ時間が守られない

「IQの高い東代とうだい君がいたから、野球を再開してみたんや。まさか、普段やってる動作が、高校野球に活かされるとはなぁ。俺、結構ヤバい奴やん」



 いやいやいや、宅部やかべさん以上に、宇宙人・火星ひぼしの方がかなりヤバイと思う。テレパシーとか、サイコキネシスとか、色んな超能力持ってるもん。



「どんなゲームで体動かしてるんですか?」


「体感型ゲームのゲット・ザ・エンペラーや。中世ヨーロッパが舞台のゲームで、このリモコンスティック使って、ゲーム用の服着てプレイする。津灯つとうキャプテンもやってみるか?」


「うん! 是非ともやりたい!」


「じゃ、この赤い服着てくれ。姉ちゃんが昔使ってたやつやけど、まだまだ感度ええから」



 赤いインナーのあちこちに黒いビー玉に似たものがついており、ボトムスのすそから出たケーブルがゲーム機につながっている。



「対戦モードで、剣闘士けんとうしをエンターっと。今からキャプテンは女剣士マガリ―な。相手の攻撃を食らうとHP減るから、上手いことよけて、このスティックふるって相手の体にクリティカルヒットさせてや」



 TV画面には、女子プロレスでバリバリ現役っぽい女性の剣士が映し出される。胸当て以外が露出してかなりセクシーだ。



「OK。それじゃ、お願いしまーす」



 マガリ―の相手は番馬ばんばさん風の大男だ。マガリ―津灯は大男のすねに攻撃するが、相手の地ならしや蹴りをまともに食らってしまう。ダメージが体に伝わり、彼女はひざをついてしまう。

 


 野球部勧誘かんゆうゲーム無敗の彼女の前に、LOOSERの青文字が表示された。彼女は床に拳を叩きつけて「悔しい」と叫ぶ。



「このゲームはやりこめばやりこむほど、強くなれるからな。おかげで、ゲームだこが出来てもたわ」



 彼が右手を広げると、親指に納豆の豆ぐらいのタコが出来ている。このゲームだこが、カーブの不規則な変化を生んだのか。



「ステイホームで、ボディが強くなりますか。私もトライしたいですね」


東代とうだい君はゲッペラより、こっちのベースボール・フレンズやろ。野球のルール覚えられるし、何より配球の勉強になるから」



 ベースボール・フレンズ(べスフレ)は、プロ野球チームの選手を操作したり、オリジナル選手を作れたりするゲームだ。



「ミスター・ミズミヤ、バトルしましょう」


「えー。ちょっと待って。母さんに言っとかないと」



 母さんに連絡したところ、晩ご飯にラップをしてくれるとのことだった。



 俺と東代とうだいは、実況・宅部やかべと解説・津灯つとうのしゃべりを聞きながら、白熱した試合を展開する。最終的に、俺が延長15回18対17で東代に勝った。



(初の練習試合まであと5日)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る