52球目 宅部の父がせわしない
「オー、ミスター・ミズミヤ! 今からミスター・ヤカベのハウスに来ませんか?」
「えー。でも、母さんが飯作ってるからなぁ」
「すぐ終わるから」
「んー。まぁ、それならいいけど」
「あたしも行く行く!」
「いいよ」
「グッド! ソー、レッツゴー!」
陽気な2人と違い、俺は名字のごとく水のように冷静だ。あわよくば、
※※※
「ただいま。友人と一緒」
彼が言い終わらない内に、アフロ頭の四角いメガネおじさんが飛び出してくる。
「おーう! カオルの友人たち、はじめましてぇん! たくさんゲームあるから、遊んでいってねぇ!」
口と同時に身振り手振り、実にせわしない父親だ。静の
「どんな仕事やってるんですか?」
早速、
「ユアムーバー」
色んな動画のサムネイルを順繰りに見せてくれる。どうやら様々なゲームのプレイ動画をアップしているようだ。
「知ってる知ってる! バックルさんて、色んな裏技教えてくれるから好きやわ」
「そんな有名なのか?」
「ハリウッドスターぐらフェイマス?」
野球一筋の俺と天才科学者の
彼の部屋に入ると、ゲームキャラのポスターやフィギュア、ゲームソフトが所狭しに並べられている。教室のスライド以上に画面が広いテレビの電源を付ければ、四方八方から音が聞こえる。
「ワーオ! サブカルチャールーム!」
「あー。この子、あたしのお気に入り」
「すげぇなぁ。これ全部、自分で買ったのか?」
「ぶっちゃけ言うと、動画で父さんがクリアしたゲーム、半分以上俺がやってて、収入の3割ぐらいもらっとる」
彼が語る内容以上に、長々としゃべれていることに驚きだ。彼は鼻で笑って、お笑い芸人の司会者のように話を連ねる。
「驚いたやろ? 昔は俺も結構しゃべっとったんやで。よう友達と
(初の練習試合まであと5日)
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