全ては天才の頭の中で。

石水 灰

プロローグ1【稲谷】

入田いりた


それが彼の名前だ。間違いなく彼は天才だった。だが、彼に期待する者は少なかった。それもそのはず、彼はまだ世に出るようなことをしていないかった。まだ世間に認知されていなかったのだ。

そして、そんな彼から1週間ほど前、5月4日くらいに電話がかかってきた。


『おーい!いなたにー!一ヶ月後……6月の4日って空いてるか?空いてたら俺の家に来てくれよ!そろそろ完成するんだ!…………え?行けない?おいおい、冗談はよせやい。え?マジで来ないの?その日は友人の結婚式……?それなら仕方ないな。じゃあ、6日以降に来てくれや。じゃなー!』


用事があることを伝えると彼は諦めてそれ以降に来いと言った。

彼らしくない。

いつもの彼ならばもう少しだる絡みする筈だ。きっとそれ程までに重要なのだろう。もしかすると彼が夢を叶えるのか?

そう呑気に思っていた。


入田が昨日死ぬまでは………………。


彼は一体何を見せるつもりだったのか、俺にもわからない。

ただ、彼は、あいつは絶対に自殺だけはしない。それは言っていた。だから事故か他殺なはずだ。

あいつの死体をしっかり調べてくれ。絶対に証拠があるはずだ。

あいつの仇を討つわけじゃない。法で裁いてもらうだけだ。


俺はこのまま、あいつの何を待てばいいんだ?

あいつは俺にとって……唯一の親友だったんだ……。」

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