第71話

「「ただいまー」」


 ようやく家に着いた。両方とも同じ家に帰って来ているのは、俺の家で色々すると言われたからだ。


「おかえりなさい」


 家で最初に出迎えてくれたのは俺の母さんだった。


「あら、なんだか二人とも変わった?」

「そんな短期間で変わるもんなのか?」

「分からないけど、なんだか垢が抜けたっていうのかしら? 取り敢えず変わったわよ」


 久しぶりの親との会話がそれだった。母さんにはそう言われたが、自覚はなかったため俺と結衣は顔を見合わせた。


「そんなに変わった?」

「別に普通だと思うけど」

「まぁ、そういうのは本人には変わらないものよ」


 母さんはそういうと、リビングに案内してくれた。


「うわー。全然変わってない。久しぶりだな……」


 部屋に着いて最初に発した言葉がそれだった。

 真ん中に四角机があり座布団が置かれている。そして、それを囲むように本棚やクローゼットが置かれている。


「本当だねー。懐かしいや」


 俺の言葉に結衣も賛成するように呟いていた。


「適当にくつろいでおいてー」


 感傷に浸っていると、そんな言葉が聞こえた。

 思ったより長かったため疲れており、ぐったりと机の近くに座った。


 そして少しくつろいでいると犬が一匹こちらに向かってきた。


「おおー、ロッキー。久しぶりだなー」


 俺がそう言ってわしゃわしゃと撫でてやると、嬉しそうに『クゥーン』と、鳴いていた。


「念願のロッキーを撫でれて満足?」


 結衣が呆れたように訊いてくる。


「ああ、満足だよ……」


 俺はそう言ってロッキーに抱きつく。このモフモフは堪らないよな。思わず寝そうになる。

 それからロッキーといろいろなことをして遊んだ。

 お座りや、お手、いろいろな芸をさせたり、とても楽しく遊ぶことができた。



 ひとしきり、ロッキーと遊び終わると俺は床に倒れ込むように寝転がった。


「楽しかった?」


 終始呆れっぱなしの結衣はそう問いかけてきた。


「ああ、めちゃくちゃ楽しかった」

「ふぅん」


 結衣は頷くとそっぽを向いてしまった。


 あれっ? なんか少し機嫌悪くなってないか。どうしたんだろう……。


「ど、どうしたんだ。結衣?」

「何がー?」

「ちょっと機嫌が悪そうだったから」

「そんなことないと思うよ。——でも」


 結衣は一度俯いた後、こちらを見て言ってくる。


「けいくんがロッキーと遊んでる間、私暇だったのになー。って」

「……。なるほど。嫉妬ってやつかー」


 俺は少しからかうように言ってやる。


「ち、違う! そんなんじゃないよー!」

「本当にー?」

「本当に‼︎」


 結衣は座っているにも関わらず足をバタバタさせてきそうな勢いで怒ってきた。


「むう」


 結衣は、プクーとほっぺたを膨らませてリスみたいなっていた。


「ごめんごめん。ちょっとからかいすぎって」

「本当だよ。ちゃんと責任とってよねー」

「わかりましたよ。結衣さん」


 それから俺たちは何気ない会話をしたり、家にあったトランプで二人でババ抜きをしたり楽しく過ごした。


 その間ロッキーが不思議そうにこちらを見ていた。

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