第69話

「なんでこんな日に寝坊するのー⁉︎」

「本当にごめんって」


 朝、寝坊してしまった。昨日準備をして、それで今日寝坊するなんて本当に馬鹿すぎるだろ! 

 自分で自分のことを貶しながら急いで準備をしていた。


「よし、準備万端だ。行こう!」

「うん! もうすぐ電車来ちゃうよ」

「うわっ! まじだ。急がないと」


 それから全速力で走って駅へと向かった。



***



「はぁー……。なんとか間に合った……」

「本当だよ……。誰かさんのせいで……」

「誠にすみませんでした!」


 電車内で深々と頭を下げた。


「しょうがないな。別に良いよ。間に合ったんだし」

「駅が家から近くて助かったよ」

「本当にね」


 その会話を尻目に、電車内でくつろげるだけくつろいでいた。色々話をして、持っていたお菓子を食べたりと楽しく過ごしていた。


そして


「けいくん! 起きて」


 結衣の囁くような声と強く体を揺らされた事により、目が覚めた。


「どうしたんだ?」

「どうしたじゃ無いよ。もうすぐ着くよ」


 そう言われて今の場所を確認すると、目的の駅の一つ前だった。


「もう! 寝坊して電車内でも寝るなんて」

「ごめんな。帰りは俺が起きとくから安心して寝て良いぞ」


 結衣も寝たかったんだろう。そう思って何気なく返した。


「そういうことじゃ無いよ。……まぁ良いけど」

「うん?」


 俺が思っていたのと違うらしい。まぁ、今は寝起きで頭が働いていないから、もっと何かあってもおかしく無いか。


 それから目的地についた。


「久しぶりだねー」

「少しくらいしか離れてないのにな」

「まぁずっとこの町にいたんだし。しょうがないことだよ」

「そうだな!」


 返事をした後、辺りを見渡してみる。

 ……全然変わってない。まぁ、当たり前か。一年すら経ってないもんな。


「それじゃあそろそろ向かうか」

「そうだね!」


 俺たちは歩いて実家へと向かった。

 駅からは少し遠いが、久しぶりのこの町に帰ってきたんだから色々出歩きたいという結衣からの提案だった。


「今住んでる場所に比べたらここって結構な田舎なんだね」

「確かにな。ここにいた時からなんとなく気づいてたけど」

「遊ぶ場所なんて限られてるもんね」


 この町には遊ぶ場所といえば大型のショッピングモールがあるくらいだ。田舎すぎるというほどでは無いが、都会でも無いと言った感じの町だな。


「懐かしいね」

「そうだなー。この店とか」

「ああー! よく行ったねー」


 そんな感じで昔話に花を咲かせていた。やっぱり最近見てなかったものを見たらテンションって上がるんだな。


「この公園も懐かしいね」

「だなー。子供の頃良く遊んでたよな」

「うん」


 家に近づいて行くにつれてどんどん懐かしい物や場所が増えて来た。

 そんな時は一際懐かしいものが俺たちの目に入った。


「あっ! ここの駄菓子屋懐かしくない?」


 結衣はそう言って少し年季入っているような店を指さした。


「確かに! ちょっと寄ってみるか」

「そうだねー。ここのきなこ棒美味しかったんだよね」


 そんな会話をしながら家に一番近い駄菓子屋に入った。

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