第56話

 夏の予定を話した後は何となくの時間を過ごした。

 そして


「テスト発表見にいこうぜ」


 放課後になり聡太に話しかけられた。


「おう。めちゃくちゃ緊張するけどな」


 俺はそう返してから、席から立ち上がった。

 結衣と有紗さんはもう見に行っているみたいだった。この教室からいつの間にか居なくなっていたから、何となくそう思っただけだが。


「急ぐぞー」

「おう」


 そうやり取りしてから、出来るだけの急ぎ足でテスト結果が張り出されている、場所に向かった。 


「これは凄いな……」

「ああ……」


 着くと最初に驚いたのが人の数だった。テストの結果発表は初めてだったから、こんなにも多くなるなんて思ってもなかった。

 紙一枚に一年生が群がっているみたいだった。

 その中でも嬉しそうにしている人や、明らか様に落ち込んでいる人など様々な人がいた。


「じゃあ俺たちも見にいくか」

「——そうだな」


 聡太の提案により俺は唖然としていた顔を叩くことで直し、結果を見ることにした。


「えっと……。あった!」


 俺は自分の点数と順位を見つけた。

しかし一つだけ不自然なことに気がついた。それは、俺と同じ順位の人が他にもいるということだ。


(へえ、結構珍しいことだなー)

そう思いながら俺と同じ順位の人のところを見ると

 "山吹聡太"

 と、書かれていた。

 俺は見間違いだと思って、目を擦って見てみても山吹聡太と書かれた文字は変わっていなかった。

 聡太は何て思うのだろうか。そう思った俺は恐る恐る、聡太の方へと目線を向けた。 

 すると聡太は何とも言えない表情をしていた。


***


「へえ。珍しいこともあるものね」

「それはもう運が良すぎるよ」


 テストの結果を結衣と有紗さんに話すと、2人は少し笑った後そうやって答えた。


「いや、まさかだよ。こんなことになるなんて思っても無かった」

「だよなー。誰が同じ点数になるなんて思うんだよって話だよな」


 結衣と有紗さんも驚いているだろうが、一番驚いているのは、俺たち当事者だろう。


「勝負どうする?」

「まあ、ここまで頑張ってジャンケンで決まるのも嫌だよな」


 少しの間悩み続けた結果


「もう切り替えて次のテストにまた勝負しようぜ」

「そうだな」


 ということで話がまとまった。こう話がまとまったら結衣たちには当然疑問が出てくるだろう。


「ねえ。結局何を命令するつもりだったの?」

「それは私も気になる」


 命令することは何かっ絶対に聞いてくるだろうと思った。


「言ってもいいものなのかな?」


 俺は聡太に耳打ちをした。


「もう言ってもいいだろ」


 俺の疑問に対して軽く返してきた。


「聡太が良いならいいかな」


 俺も別に隠し倒したい理由は無かったから、話してしまうことにした。


「そんなことでムキになってた……と」

「私たちの努力は何だったんだろう……」


 2人は落ち込むのではなく呆れているみたいだった。


「まぁ、だからあの時も喧嘩じゃ無いから安心して良いよ」


 俺は2人には迷惑をかけたと思っているので、喧嘩していると思われていた事を弁解した。


「ああ、それのことなんだけどね」

「私たちが冗談のノリで言ってみたら」

「2人が本当にしちゃったから後に引けなくなったのよね」


 2人は俺が言った言葉に対してそんなふうな言葉で、返してきた。


「ということは?」

「喧嘩なんて疑ってないわよ」


 聡太が訊いてみると有紗さんがそう答えていた。

 何だか安心したようなしなかったような。まぁ終わり良ければすべて良しってことにしようかな。

 こうしてドタバタしていた期末テストは終わりを迎えた。

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