第26話

「さあ、出来たわよ。やりましょう」


 戻ってきた有紗さんがそう言ったので、早速始めることにした。


「王様だーれだ?」

「あ、俺だ!」


 最初の王様は聡太だったらしい。王様が何かを命じて、それを実行しなきゃいけないと言うのが王様ゲームの大体の内容だよな。

 酷い命令をしてこなければ良いが。


「じゃあまずは簡単なところから行くか」

「そうね」

「じゃあ1番と2番がハイタッチ」

「私1番」

「あ、私2番だ」


 最初は本当に簡単だった。

 二人は普通にハイタッチをして禊終了。

 こんな感じでどんどん続いていった。

 そして何回か続いた後。


「じゃ次行くわよ。王様だーれだ」

「次は私だ」

「お、結衣か」

「なんで命令するの?」

「えっと……。一回しんどいのにしてみようかな。という事で1番と3番が耳元で愛をささやき合うとか?」

「「「…………」」」


 ちょっとそれは想定してなかった。まさか結衣がきついのを出すのは予想外だった。 

 1番と3番だったよな。……俺は2番か良かった。

 

「1番は俺だな」

「3番は私よ」

「まぁ頑張れー」


 良かった。誰も得しない空間が流れるところだったよ。


「ほ、本当にやるの?」

「王様の命令だよ。それにいいじゃん二人とも恋人でしょ」

「そうだぞ。俺たちお前たちにいじられてる時恥ずかしかったんだからやってくれないと」

「あーもう、わかった。やるよ、やる」

「え、聡太? 本当にやるの」

「ああ、もうしょうがないだろ」


 有紗さんが珍しくオドオドしていた。そしてその横では覚悟を決めた聡太。

 こいつらが俺らをいじって楽しんでた理由がわかる気がする。


 そしてまず聡太が有紗さんがの耳元で囁いた。

 その瞬間有紗さんが顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていた。


「もー。そうくん。ずるい、ずるいよー」


 そう言いながら聡太の胸に飛びつきポカポカと殴っていた。

 こんな風に甘えてる有紗さんを見るのは初めてだ。それに


「そうくん?」

「はぁ。やっぱりバレるよな。こいついつも真面目ぶってるけど、きっかけがあるとこんな風に甘々になるんだよ」

「私がけいくんに甘えるのよりずっと甘えてない?」


 有紗さんはずっと猫みたいに聡太にくっついて離れようとしない。


「これが有紗の裏の姿というか本当の姿というか……」

「いい物が見れたよ」

「だな。でもまだ有紗さんが言ってないから」

「へぇー? 何を?」

 

 本当に有紗さんは聡太に抱きついてから離れようとしない。


「ほら。聡太に愛を囁くの」

「あー。あたしもそうくんのことだいすきだよー」

「ありがとな」


 結衣が唆すと大きな惚気ボイスでそう言った。


「やるにはやったけど……」

「まさかこんな一面を見ることにはなるとは……」

「こうなるから人前では言わないんだよ」

「聡太はこうならないのか?」

「流石にならねえよ。心の中で留めておけるって」

「まぁ二人ともこうだったら成り立ってないよね」


 二人が仲良くなっている秘訣を垣間見た気がする。


「おーい。有紗ー。そろそろ戻れー」

「じゃーきすしてー」

「他に二人もいるのに?」

「へぇ?」


 そう言って猫のような有紗さんは周りを見て


「…………」


 正気を取り戻したようだった。


「さっきのは見なかったことにしてー!」


 正気を取り戻して自分がやった事を思い出して赤面しながら、そう叫んできた。

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