第9話 

 結衣とのデート? から数日後、入学式の日になった。


「おーい、そろそろ行くぞ」

「ちょっと待ってー」


 そう言って、玄関に居る俺の所まで走ってきた。


「どう……かな?」


 結衣はそう言って、制服についているリボンを触った。


「似合ってるぞ」

「ありがと。けいくんも似合ってるよ」

「そりゃ、どうも」


 中学時代はセーラー服と学ランだったから、ブレザーに変わってて変な感じがする。


「じゃあ行こ」

「ああ」


 そして俺たちは学校に向かった。

 そして学校に向かっている途中に結衣に一つ言っておいた。


「なぁ結衣」

「なーに? けいくん」

「そのけいくん呼びは学校ではしないように」

「えー! ずっとこの呼び方なのにー」

「だって知ってる人が居ないんだぞ。そんないきなり、俺のこと「けいくーん」って呼んだら色々ヤバいだろ」

「そうかな?」

「そうだ。とにかく頼むぞ」


 じゃないと俺が男子から恨まれるからな。


「はーい。でも一ヶ月出来たらちゃんと、ご褒美頂戴ね」

「ご褒美って何を?」

「うーん……。エビフライとか?」

「別に材料さえあればいつでも作るぞ。それくらい」

「うーん……。じゃあ!」


 何かを思いついたように手を叩いた。


「じゃあ一日私のいうことを聞くこと! とか」

「うーん……」

「だめ?」

「まぁいいか。その時の俺に任せるよ。その事に関しては」


 結衣ならそこまでしんどい命令とかもしないだろうし。

「やったー。じゃあ圭人くんって呼べばいいかな?」

「まぁそれでいいと思う」

「分かった! 圭人くん」

「いいぞー。その調子だ」


 そんな会話をしていると学校に着いた。


「さぁクラス分けはどうなってるかな?」

「一緒だったらいいね」

「そうだな」


 そんな期待を話し合って張り出されている紙を見てみた。


「俺は2組で結衣は……」

「私も2組だよ!」

「おおー! やったな」

「うん」


 クラスは一緒で一安心した。違うかったらしんどいだろうしな。


 そしてそのまま入学式が終わり、HR前の休み時間となった。

 席は窓際から2番目の席で1番後ろが結衣、その前が俺だった。

 出席番号だったら、毎回近くになるからな。


「ねぇ。けい……とくん」

「何だ?」

「今日の夜ご飯は何する?」


 休み時間、俺は結衣に背中を叩かれて、振り向いた。


「うーん、何でも」

「それが1番困るんだよー。今日は私が作るんだから」

「ほんとに何でもいいんだけど……」

「もー」


 そんな会話をしていると一人の男子が話しかけてきた。


「なあなあ、お二人さん。何を話しているのかな?」

「誰!」


 結衣が俺を庇うように立ち上がった。


「ああ、ごめんごめん。俺の名前は、山吹聡太やまぶきそうたって言うんだ」


 俺は結衣を座らせ自己紹介をした。


「俺は佐々木圭人だ。でこっちは笹原結衣。よろしくな」


俺がそう言うと、結衣はペコリと頭を下げた。

「ああ、よろしく。——で何を話してたんだ?」

「あ、ああまぁ色々」

「何だよー。おしえ——いったー。誰だよ」


 聡太が誰かに叩かれたため後ろを見てみると後ろに女子がいた。

 結衣が可愛いならこの人は美人って感じの人だ。


「聡太。邪魔したらダメでしょ。——ごめんなさいね。聡太が」

「何だよー有紗。別に邪魔してねぇって。な、圭人。結衣さん」

「ま、まぁそうだな」

「邪魔では無かったですけど」

「そうなの! てっきりまた聡太が何かやらかしたんじゃないかと思って」

「そんな俺やらかしてねえよ」


 なんか結構仲良さそうな会話だった。俺がそう思っていると、結衣が聞いた。


「お二人はどう言う関係で?」

「ああまぁ俗に言う恋人ってやつだな」

「まぁそうね。——ってそういえば自己紹介してなかったわね。名前は上原有紗うえはらありさよ。よろしくね」

「あっはい。私は笹原結衣でこっちは佐々木圭人って言うんです。よろしくお願いします」

「結衣さんに圭人くんね。よろしく。あとそんな硬くなくていいからね」

「は、はい」

「もっと柔らかくていいって」

「ご、ごべんなさいー」


 そう言って有紗さんは、結衣のほっぺを軽く引っ張った。やわらかそうだなー。


「じゃあ次はそっちについて聞かせてもらおうかな?」


 と聡太が言った。


「関係って言ってもただの幼馴染ってだけだけど」

「そうなの! 意外ね。てっきり付き合ってるもんだと」


 有紗さんがそう言った。そしてその言葉を聞いた結衣が、少しモジモジしてた。


「はっはーん。なるほどな」

「これは面白そうね」


 結衣の反応を見た二人が、何かが分かったような顔で、顔を見合わせた。


 気になったがそのままチャイムが鳴ったため、聞くことはできなかった。



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