第5話5

 『本間くん?』



 俺はその姿を見たまま、停止して絶句していた。



 『なんで』



 『本間くん、どうしたの?』




 (一体どういうことなんだ、これは)




 『高橋さん、安心して下さい、あれは霊じゃありませんから』



 幽霊が透明ならば月光によって影もつくらないだろう。つまり、あれは光を吸収する有体物だ。そして、あのシルエットから、その正体は人間ということは一目瞭然だった。しかしながら、いくら俺が科学者の卵といえども、この時はそんなことは考えもしなかった。



 俺が2階の住人が霊ではないと気づいた理由。



それは単純にその姿と、その鋭く光る目に見覚えがあったからだ。




 そして、雲から脱した満月の光がシルエットに隠された2階の住人の全体像を捉えたとき、その記憶は確信に変わった。

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