転生したからといって何かする訳ではありません!!
千燈
第1話
雲一つ無い空に朝日が昇る。今日も一日の訪れに感謝しながらうららかな日差しに包まれて軽く伸びをする。えぇ、とっても良い日になりそうですね。ただ……
「前世の記憶を思い出したという問題を除けばですが」
あぁ!もうなんで寝ただけで別にトラックに轢かれたわけでも頭をしこたまぶつけた訳でも無いのにそんな事思い出すかなぁ!
先程までの悠然とした態度は何処へやら、早くに起きたためメイドが居ないのをいい事に長く伸びた絹糸のような金髪を掻き毟る。それでも朝日に照らされた髪がきらめき彼女の美しさをより際立てる。本当、美人とは得である。だがそれも髪の隙間から漏れでる気品さもへったくれも無いうめき声によって台無しになっているのだが。
まぁ、とりあえず落ち着きましょう。私は大丈夫、ともかく思い出した情報を寝惚けた頭で整理しましょう。
まず私は……誰でしたっけ?
「待って!?」
失った記憶を取り戻したら記憶喪失だった件について。
落ち着きなさい、私。大丈夫、何も大丈夫じゃないけど大丈夫よ。えぇ……
そして一つ一つ思い出してゆくとどうやら自分に関する情報は全て抜け落ちているというあまりないパターンの転生?のようだという事は分かりました。ですが前の私はどうやらサブカルチャーに傾倒していたらしくアニメやマンガ、ゲームに関しては多く触れていたようですね。その辺りの記憶は鮮明に色濃く残っていますから。
後もう一つ思い出した事があるのですが、
「失礼します。お嬢様、朝食の時間となりました」
私、男だったみたい……
「「「主に感謝を込めて」」」
毎日食事はお父様とお母様とで食べる事になっているのですがそれ以前の問題として前世の記憶のせいで先程着せられたドレスやコルセットに対し急に違和感を覚えたせいで微妙に居心地が悪いのです!それにメイドに服を着させられるとか幼稚園の子供じゃないのですから、いえ、権威的にメイドに着替えさせるのは当たり前というのは知っているのです。でも服を変える時にそんな憐れみの目を向けなくったっていいじゃない……朝っぱらから泣きそうになったわ。
「そんなに気難しい顔をしてどうしたんだいレーナ、何かあったのなら言いなさい」
……はっ!私か、完全に今自分の名前忘れてた。
「大丈夫ですわお父様、今日も主のおかげで良き朝を迎えられましたもの」
うぇ、女言葉吐きそう。これは言うなら価値観の上書きのようなものね、早く慣れないとギャップで死にそう。
「そう、それなら良かった。まだ子供なのですからそんな顔似合わないわぁ」
そうおっとりとした雰囲気で言っていますがねお母様、私多分前世含めたら確実に二十は過ぎてますよ。という心の呟きも伝わることなく朝食の時間は過ぎてゆく。
さて、朝食が終わると家庭教師による授業の時間なのですが運の良いことにこの異世界はなんと魔法のある世界だったので魔法も学べるのです。しかも今日からなので事前知識無し、オタクにとってネタバレは厳禁なのと同じように折角前世の記憶が蘇ったのですから一から楽しみたいもの。えぇ、とっても妄想が捗るわ。
「私は家庭教師のネムという者です。よろしくお願いしますね、レーナお嬢様」
「よろしくお願いしますネム先生、おっ……私とっても楽しみでしたの!」
危ない!今間違えて俺って言いそうになったわ……もしそんなの誰かに聞かれてみればお父様とお母様に病院に連れていかれそうね、今度から興奮してる時にも油断しないようにしないと。
ネム先生を見ると何やら器具を取り出していたようで余りこちらの方に気を向けてなかったようだ。バレてなくて良かったわぁ。
「やる気があって結構、女性には魔法を使う必要は無いと仰る層もおりますが正しい魔力の使い方を知ることで今後魔法学園に行く時に役に立つ事は確実です。それでは最初の段階として魔力量と属性を測ります、さぁ……ここに手を当てて」
彼女に腕を掴まれてゆっくりとガラス玉に手を当てる。すると触れた所からガラス玉が絵の具の水滴を落としたように黒色にが広がってゆく。少し不安になって先生の方を見るとなるほどと頷きながら羊皮紙にメモしていた。
ねぇ、これもう離して良いの?どんどん黒が広がってってもうガラス玉真っ黒なんだけど!
「もう手を離して大丈夫ですよ」
私が焦ってオロオロしていると先生はメモを終えたらしくそうお声がかかる。手を離すとガラス玉はゆっくりと元の透明へと戻っていった。
「属性は闇、量は他より多いのですが異常と言える程ではなく闇属性も珍しいけれど大丈夫、十分対応可能です」
そうして先生の解説が始まったが長かったので自分なりにまとめてみると闇属性は精神攻撃やら呪いといった事に適正のあるゲームで言うデバッファー、珍しさでいうと血液型で言うところのAB型程度といったところでしょうか、そして魔力量に関しては平均の少し上らしい、本当突飛び抜けて秀でた所も無い感じですね……私本当に転生者?しかも金髪に闇属性魔法って余り似合わなくないかしら?
ですが、なってしまったものはしょうがありません。やってやりましょう異世界ライフ。あっ、これ私悪役令嬢とかではありませんよね?
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