第32話ですわ!



「分かった。それじゃあ一応ハイル王子たちと合流して今の話を……」

「それはそれとして!」

「あ、うん……ハイル王子とエルミーのデート認定の確認、だね?」

「ですわ!」


 ご理解が早くて助かりますわ!

 聞けばハイル様たちとの合流地点は町の中央にある噴水との事!

 この場所はハイル様とヒロインがデートを終えて別れを惜しむ場所ですわね。

 夕陽を浴びながら、二人は手を取り合い、明日また学院で会おう、と寂しげに微笑みながら見つめ合うのですわ!

 はっ!

 懸賞屋を出たらなんと!

 夕焼け空になっていますわ!

 これはやはりデートイベントの真っ只中という事ですわね!

 よろしくてよ、よろしくてよ!


「いざ! 噴水を覗き見ですわ!」

「ああ、うん。多分キャロラインさんが考えている感じではないと思うけど……うん……」


 そんなのさすがのわたくしも分かっていますわー……。



「……………………」

「……………………」



 ほーらやっぱりねー、ですわ。

 なんですの、あのバス待ちしている赤の他人感は……。

 甘い雰囲気どころか相手に一切の興味を持っていませんわ……!

 一メートル離れて噴水の縁に座り、お互いの方を見る事もなく、会話は当然ゼロ!

 ああぁ……デートイベント……それでもこれで完了という事なのですわね、夕焼け空!


「……デートイベント強制展開強制終了ですわね」

「そ、そうなんだ」

「デートイベントクリアという事は、次はいよいよ卒業パーティーイベントですわね!」

「(ポジティブだな〜)……卒業パーティー?」

「はい!」


 わたくしの虐めの集大成ですわ!

 ヒロインを虐めていたわたくしの悪行の数々、そしてその証拠を携えたハイル様に卒業パーティーの最中、大勢の生徒たちの前でそれを断罪され婚約破棄を申し付けられる!

 そしてキャロラインは逆上。

 ヒロインとハイル様に魔法で襲い掛かり、ヒロインに返り討ちにされますのよ!

 わたくしの!

 最大の!

 見せ場ですわーーーー!


「卒業パーティーイベントはヒロイン……この場合はエルミーさんが『魔法付加』と『魔法付与』を覚えたら起きますわ!」

「『魔法付与』! それってオレも覚えられる!?」

「ほあ!?」


 エイラン様に肩を掴まれて顔を寄せられましたわ。

『魔法付与』は『魔法』系スキルの一種で、主に武器に魔法効果を付与する事ができるスキルですわ。

 しかし『鍛治』や『生産』のスキルを持っていれば武器生産の時点で魔法効果を付与する事も可能で、『魔法効果付与武器』や『魔法効果付与防具』を持っている事は上位プレイヤーに上がる条件といっても過言ではありません。

 というか持ってないとなれませんわね。

 もしかして……。


「あ、ごめん……」

「エイラン様は『魔法付与』が覚えたくて学院に編入されましたのね?」

「う、うん……『魔法』も覚えるの大変だったけど、『魔法付与』は持ってる専門職の人が各国王都にしかいない上、自分で覚えるには『魔法』と『魔法付加』と『鍛治』と『生産』と『武器知識』『防具知識』『薬学』と……もうとにかく条件が多すぎて!」

「ほほほ……」

「その上自分の店を持ってないとダメとか!」

「ほほほほほほ……」


 そう。

 そのぐらい得るのが大変なスキルなのですわ。

 まあ、得られればあとは上がるだけですけれど。

 確か今の上位プレイヤーには『魔法効果付与』を武器に二つ、三つ……四つだか五つだか……とにかくそのぐらい付与して持っている方がいると聞きます。

 マスターもきっとそんなプレイヤーたちを満足させるべくレイド系モンスターイベントを始めたのですわ。

 レイドを組まないと倒せないモンスターなのに、そういうプレイヤーの皆さんは一人で倒してしまいますのよ。

 まあ、本当にほんの一握りのプレイヤーですけれど。

 なるほどですわ。

 エイラン様の目指すところはそこなのですわね!

 素晴らしいですわ!


「大丈夫ですわ。最後の授業で覚えられますわ」

「本当!? やった! …………。というか、それなら尚更身分『貴族』ってずるいね……」

「貴族特権ですわ。エイラン様はなんの身分でスタートしましたの?」

「オレは『冒険者』スタートだよ……」

「まあ、一番人気の『身分』ですわね……」


『冒険者』はファンタジーもののゲームで圧倒的な知名度を誇ります『身分』ですわね。

 ですから無難に『冒険者』から始める方がとても多いです。

 それに『冒険者』から『剣士』『戦士』『剣聖』の『身分称号』を得れば職業『勇者』や身分『英雄』や『英勇』にもなれますのよ。

 上位プレイヤーは大体これらの身分や身分称号を持っているはずですわね。

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