相合傘と○○

@a_tomi

第1話「相合傘」と「お母さんと息子」

♪~~♪~ ♪~~~


あら、もうこんな時間。お昼のワイドショーが始まったわ。

幼稚園にヨシノリを迎えに行かないと。


雨が降りそうなので自分の傘とヨシノリの傘を持って幼稚園へ向かう。

男の子ってどうしてすぐに傘をだめにしちゃうのかしら。って夫にいったらニヤニヤしていた。あれば前科があるわね。


お遊戯室の前でもう順番待ちのお母さんが並んでいる。一番最後と思わしきお母さんの後ろに並ぶ。あら、降ってきたわ。もうちょっとなのにね。仕方なく傘をさす。

「いやー降ってきましたね」

後ろから男の人の声が。びっくりした。

「そうですね。家に帰るまで待ってくれればいいのに」

あら、順子ちゃんのお父さん。よくお迎えに来るのでもう顔なじみね。

「大丈夫だと思ったんですけどねー、持ってくりゃよかった」

いや、ここは保険込みでもってくるでしょ! て人それぞれだし口には出さない。

「ママー、じゅんこちゃんといっしょにかえっていいー?」

「おとうさん、いい?」

「いいわよ」

「ごめん、順子。お父さん、傘忘れちゃった」

「えーおとななんだからしっかりしてよ」

ぷふっ、さすが女の子。しっかりしているわ。

「ぼくがかさをもってるから、いれてあげるね」

「ありがとー!」

ヨシノリは順子ちゃんと相合傘で幼稚園の門に向かう。

「じゃあ私も入れてもらおうかな」

おい! 順子ちゃんのお父さん! 何をしれっと!

「雨が止むまでそこのファミレスで雨宿りしませんか?」

えっ、これが狙いなの…。

「ごめんなさい、晩御飯の用意もあるし帰らないと」

「持ち帰りしたらいいじゃないですか。出しちゃいますよ。どうでしょう?」

何なの! やたらくっついてくるわね!

「娘たちもああだし。大人も、ね」

…。ムカムカ。間抜け面して何を言ってるの?

「……」

「…。な、なーんて。はは」

今は慎ましく家庭に入っているけど、若いころはレディースのサブだったのよ。ちょっと思い出して睨んだらあっさり。ちょっと火遊びのつもりかもしれないけど女はいつでも本気なのよ。


順子ちゃんには悪いけどバイバイしてヨシノリと家へ急ぐ。

「じゅんこちゃんとあそびたかったのにー」

ぷりぷり怒っているヨシノリも可愛い。

「ママはねー、ヨッシーと二人っきりがいいの」

「ぼくはパパとママといっしょがいいなー」

「あ、そうね。ママもよ、うふふ」


今日はパパにベタベタしてあげよう。

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