第29話

「十朱……」


 そんな伊能君が、帰り仕度していると声を掛けて来た。


「なに?伊能君」


「今日さぁ、お前んち行っていい?」


「えっ?ええ??」


 余りの突然の事にキョドリまくっていると、それを目敏く見つけた町田さんが、物凄い速さで側迄やって来た。


「やったね十朱君」


 ……な、何がやったねなんだ……町田さん……


「二人仲良くなるチャンスじゃない?」


 何故だがガッツポーズを作ってくれる。


「町田も来る?」


 伊能君が静かに言うと、町田さんは恥らう様に伊能君を見つめた。


「残念。私今日塾の日……」

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