第558話 勝負の行方

目くらましの効果も無くなり、フィストアは反撃してくる。見たことないステップで、高速に動きながら接近と後退を繰り返しフェイントをしてこちらをかく乱した後、強烈な一撃を繰り出してきた。


「はやっ!」


あまりのスピードに驚いたが、咄嗟に回避することはできた。だけど、その必殺の一撃すらフェイントだったのには完全に裏をかかれた。ダナティーアの背中から何かが上空に打ち出された。それはアルレオ弐の真上に飛んでて来て炸裂する。


「上空に熱源発生! 回避してください!」


危険を感じたフェリが警告する。声と同時に転がり避けるが完全には間に合わなかった。熱の塊が降り注ぎ、幾つかがアルレオ弐にぶつかり破裂する。


「ぐっ!! フェリ、ダメージは!」

「右肩と左足を損傷、行動力の二割ほど低下しました!」

「ただでさえ全力が出せないのに……仕方ない、奥の手をだすぞ!」


追撃してくるダナティーアを魔光弾で牽制しながら距離をとり、ヒロイックブーストを発動する。一時的にアルレオ弐の能力を爆上げさせる。半減している出力を補うには十分のパワーとスピードで、一気にダナティーアとの距離を詰めて、剣を振るった。


動きが激変したアルレオ弐の攻撃に驚いたのか、回避が遅れる。先ほどの攻撃で取れそうになっていた腕に止めを刺した。切り落とされた腕は高く宙を舞い、ポトンと地面に落ちる。そのまま追撃で、ダナティーアの首を狙う。しかし、体勢を持ち直したフィストアの反応は速かった。攻撃は剣で受け止まられた。


剣と剣が交わり、ジリジリと押し合いになる。互角の押し合いであったが、ブースト状態なこともあり徐々にアルレオ弐が押し込み始める。このままブーストが切れる前に勝負を決めなければ勝つのは難しいだろう。力を込めて優位な体勢を作ろうとした。


「ハハハッ、やはりそれ相応の力はあるようですね。しかし、この程度では過去の英雄たちにはまるで歯が立たないでしょう」


「偉そうに言うな! 勝負なんてやってみないとわからないだろうが!」


嫌味な言い方になんか腹が立ったので、そう言い返しながら一気にダナティーアを押しのける。かなり強い押しだったこともあり、ダナティーアは尻餅を付く感じで倒れた。


この隙を逃さない、素早く踏み込むと、剣をダナティーアの頭部めがけて振り下ろそうとした。


「勝負あり! そこまでです! 試合を止めて下さい!」


ユキハの声を聞いて寸前で手を止める。剣先は頭部の鼻先で止まった。


「お見事です。これから楽しくなりそうでしたが残念ですね」


余裕の言葉から今の戦いで本気を出していなかったように聞こえる。だけど全力じゃなかったのはこっちも一緒だ。


「しかし、一騎打ちは負けてしまいましたが、勝負はこちらの勝ちのようですね。我々の目的は達成されました」

「えっ、どういうことだ?」


意味不明のセリフに、戸惑っていると、フェリが急を告げる。


「遺跡に二つの高エネルギー反応が現れました。やられました……この茶番はただの時間稼ぎで、裏で封印の解除は続けていたようです」


やられた。まさか勝負自体がただの時間稼ぎだったとは……英雄たちは目覚めてしまった。真紅の機兵に目覚めた英雄二人、そしてアムリア王国に無双鉄騎団、これからどういう展開になるのか俺には予想できなかった。

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