第540話 初撃圧倒

「ガルーダⅡも続きます!」


四元素砲の一撃の後、ガルーダⅡは上空に飛びあがり弓を構える。どうやらファルマも独断で広範囲攻撃を撃つようだ。


「アローレイン!!」


ガルーダⅡから放たれた数本の光の矢は、次々と分裂して増えていく。数えきれないほどに増えた無数の矢は、まるで雨のようにヴァルキア帝国軍に降り注ぐ。


四元素砲ほどの威力はないけど攻撃範囲はアローレインの方が広い。シールド展開の間に合わなかった敵機は光の矢に貫かれて沈むように倒れていく。


「ヤマトは後方の艦隊を狙って砲撃開始! 魔導機隊は渚、アリュナ、ナナミを先陣に、敵魔導機を迎え撃て!」


ジャンの言葉が終わるや否や、アリュナのベルシーアが敵に向かって走り出す。いつも以上にやる気のある行動は、おそらく強化された機体を実践で試したいからだろう。


ベルシーアは素早く回転しながら敵集団に突撃すると、右手と左手にそれぞれ持った二つの半月の剣を振るう。切れ味のよい刃は、豆腐でも斬るように敵の装甲を切り裂く。脅威的なスピードと、軽やかに踊るかのようなステップに惑わされ、圧倒的多数の敵は反撃すらできずに次々と撃破されていく。


アリュナに負けまいと、ナナミのヴァジュラ改も遅れて敵集団に突撃する。ベルシーアほどのスピードはないが、どっしりと構えた姿に隙は無い。シールドで敵の攻撃を簡単にいなし、強力な武器であるガイアラブリュスで粉砕していく。錯覚だと思うが、一振りで数機の敵機が吹き飛ぶようにすら見える。


アリュナやナナミと違って、渚のディアテナは静かに敵陣に踏み込んでいた。一見、早くはないように見える動きだけど、敵はまったくついてこれない。無駄なく、最善の動きで敵中を移動するだけで、敵機は崩れるように倒れていく。


ジャンの読み通りだろう。渚、アリュナ、ナナミの三人の先陣は、敵を圧倒して翻弄する。組織的な攻撃力を削いだタイミングで、他の無双鉄騎団の魔導機隊がヴァルキア帝国軍へと襲い掛かった。


無双鉄騎団の一般ライダーが使用するのは、アムリア連邦軍の量産機を強化改良した新型機体、ラルキューレ、ハイランダー機でありながら、最大でエクスランダークラスの戦闘力を発揮することができる強力な汎用機だ。


鍛錬や訓練で強化された無双鉄騎団のライダーが操作するラルキューレは想定通り、いや、それ以上の力を発揮する。戦いはまるで、子供の集団と屈強な格闘家集団が戦っているかのように圧倒的で、数の差をものともしていない。


さらにファルマが上空から強力なアローを連射して支援する。敵のエース級の機体を見極め、狙い撃ちにできるのは魔導機マニアの知識があるからこそだな。


俺も負けてはいられない。高速飛行で敵の後方に回り込み、命令系統を叩く為に旗艦を探す。その間も無数の弾幕が撃ち込まれるが、変則的に移動しながら飛び回るアルレオ弐に当てるは難しいようでかすりもしない。

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