第538話 最大射程
リュベル王国軍は、俺たちの接近に気付くと、すぐに戦闘態勢に入った。戦闘艦の主砲が一斉にこちらに向く。しかし、まだ砲撃してくる気配はない。
「ジャン、リュベル軍はどうして撃ってこないんだ?」
アルレオ弐のコックピットで様子を見ていた俺は、砲門を向けても中々撃ってこないリュベル軍が理解できなくジャンに聞く。
「単に射程が足らねえんだよ。ヤマトやフガクの主砲はラフシャル設計の特注品だからな、それに匹敵する艦砲なんて持ってる国は少ないだろうよ」
「だとすればここからヤマトの主砲で撃てば一方的に攻撃できないか?」
「その通り、すでにヤマトの主砲の準備はできている。全砲門攻撃開始! 敵ライドキャリア群に向けて撃ちまくれ!」
ジャンの号令の後、すぐにヤマトの主砲が火を噴く。高速で打ち出された砲弾は、レーザービームのような直線的な奇跡を描き、敵のライドキャリアに命中する。巨大なライドキャリアが、その一撃で大爆発を起こして粉々に分解した。
為す術もなく、ヤマトの砲撃により次々と敵艦が撃沈されていく。敵は焦ったのか、慌てて魔導機を出撃させてきた。
「ヤマトはそのまま敵のライドキャリアを狙って砲撃を続けろ! 他の艦は近づいてくる魔導機隊を狙い撃て! 魔導機隊も全機出撃、味方の艦砲に巻き込まれないように迎撃準備しろ!」
ラネルから全軍の命令権を預かっているジャンは、他の艦へそう指示を出す。この国では実績が十分あるからか、一傭兵の指示に連邦正規軍は素直に従い動く。
近づく敵の魔導機隊に容赦ない艦砲射撃が降り注ぐ。アムリア連邦の戦闘艦にはラフシャルが提供しているサラマンダー火砲が装備されている。ハイランダークラスの魔導機にも致命的なダメージを与える強力な火力は、リュベルの重装魔導機すら粉々に粉砕する。
一方的にヤマトの艦砲射撃を受けていた敵ライドキャリアは、攻撃する為にこちらに向かって移動してきた。そんな敵艦に容赦ない指示を出す。
「敵に攻撃する射程を与える必要はない! 近づく敵艦を狙い撃て!」
敵の主砲も十分脅威だ。超装甲のヤマトはともかく、他の連邦正規軍の艦は攻撃されればダメージを受ける。味方を守る為にも敵には非情になる。
敵艦の機動力より、ヤマトの主砲の砲撃スピードの方が上手だった。敵は攻撃できる射程に入る前に、無慈悲な砲撃を受けて撃沈していった。
艦砲射撃の援護を受けることのできない敵の魔導機隊は、無防備でこちらの砲撃を受け続ける。前進することも難しく、シールドなどで防御するのがやっとの状況だが、シールドも無敵ではなく、何度も砲撃を受けると破壊され、防ぐ術がなくなった機体から破壊されていく。
「この戦いに俺の出番はないかもな」
一方的な艦砲射撃に完全勝利を予感してそう言うが、すぐにジャンに怒られた。
「馬鹿野郎、現状がいつまでも続くと思うなよ。ヴァルキア帝国が駆けつけてくれば状況は変わるし、リュベルも戦法を変えてくるだろうからな」
もっともな言葉に反論できない。やっぱり楽はできないということだな。
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