第528話 情報源

ジャンはアリュナたち護衛に、集まった勢力の代表たちの安全を確保するように指示を出す。その間にハリソン王に話しかけて気をそらした。


「我々はということはお前と同じように動いている同志が他にもいるってことだな、天から啓示となると、さらに上の存在がいるってことになるが、その人物は誰だ?」


「無礼な奴め、王であるこの私をお前呼ばわりとはどこのどいつだ! それに俺は誰の下でもない! 大いなる意思の元で、自分の考えで動いているのだ!」


「失礼、自己中心的な王族様でしたね、それでは話を変えよう。その啓示を貴殿に伝えた人物は誰なのか、いや組織と言った方がいいですかな」

「フッ、もうよい、貴様と話すことなど何もない。愚人にはそれ相応の死に方をプレゼントしてやろう」


「余裕だな、護衛が多いといっても絶対数ではないだろ? ラネル大統領や俺たちを蹂躙できる保証がどこにあるんだ」


ジャンはまだ情報が欲しいのか、殺戮に動き出そうとするハリソン王を静止するかにそう話を続ける。


「馬鹿が、この護衛の兵たちが普通の兵士だとでも思っているのか、こいつらは肉体を限界まで強化した超越兵だ、一人で100人分の力を存分に味わうがよい!」


ハリソン王はそう言うと命令を下した。ハリソン王の部下は一斉にラネルに向かって動き出した。その兵たちの動きは普通ではなかった。狂ったように頭を振り回し、もの凄いスピードで迫ってくる。


「ちょっと普通の兵じゃないようだね、双鬼! 出番だよ!」

アリュナが声をかけると、二本の巨大なハンマーを軽々両手に持ったダルムと、両手剣を左手に片手で持ち、右手に棍棒を装備したバルムがラネルの前にゆっくり出てきた。


「俺ら整備士なんですがね……まあ、大した手間じゃねえですけどね」

「そうだな、昼飯前の運動には丁度いい」


二人はそうブツブツ言いながらも、襲ってくるハリソン王の兵たちを迎え撃つ。


ダルムは、飛び切りかかってきた兵を右手のハンマーで叩き落す。横から斬りかかってきた兵は左手のハンマーで吹き飛ばした。さらに突進しながらハンマーを軽々振り回し、五人の兵を軽く蹴散らす。


バルムは前蹴りで一人を吹っ飛ばして間合いを取ると、高くジャンプして敵の集団の中に降り立ち、回転するように武器を振り回して一気に10人近い敵をなぎ倒した。


一瞬で半数以上の兵が倒されたのを見て、ハリソン王の顔色がみるみる変わる。


「馬鹿な!!! 一人で100人分の力を持つ兵だぞ!! そんなことが……」


しかし、現実には一人分の働きもすることなく、ハリソン王の兵は二人の整備士によって蹂躙された。最後の兵が倒されたのを見ると、傲慢な態度だった王は、へなへなとその場に座り込んでしまった。

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