第527話 見えた敵の姿
各地から駆けつけてきた勢力の代表は、見晴らしの良い丘の上に設置された屋外会議場へと集められた。そこで初めてどんな人たちがここへ来たのかわかった。顔ぶれを見てラネルが大きく頷く。
「怪しい人物はいないようですね、みな連邦を支えていた人たちばかりです。特にあの方、あの人は連邦西方のデイカ王国、ハリソン王に間違いありません。ハリソン王は連邦第二軍の軍団長も務めている方で、信頼できる人です」
王様で軍団長なんて凄いな、そんな人がきてくれたなら心強い、そう俺は思ったのだげどジャンは別の感想を持ったようだ。
「そりゃ、おかしな話だな」
「何がおかしいんだ?」
「いや、軍団レベルの兵力を保持しているにしては、現状の戦力が少なすぎる」
「確かに軍団というほどの数を率いているようには見えないけど、どこかに待機させてるんじゃないのか?」
「少し考えれば、ここが戦場になる可能性が高いのは予想できることだ。それなのに戦力を出し惜しみする理由などあるか? それに見てみろ、護衛の兵が多すぎる。味方の会合にどうしてあれほど警戒する必要があるんだ?」
ハリソン王の周りには重装備の30名ほどの兵が護衛していた。王様だから護衛ぐらいいてもおかしくないけど、確かにちょっと多い気がする。
「しかし、だからといって奴が敵と決まったわけではない。ただのビビりの王族って可能性もあるから、尻尾を出すまで泳がせるぞ」
尻尾を出すのはラネルを暗殺するタイミングになると思う。こりゃ、どう転んでもひと悶着ありそうだな。
集まった勢力の代表が、順番にラネルに自己紹介と、国内の混乱を鎮静させるのに尽力すると宣言するなか、ハリソン王の番が回ってきた。彼は臆病な王族などとは微塵も感じさせないほど堂々としている。だとすると過剰な護衛はなんの為なのか、その疑問はすぐに露呈した。
「この度はこのような茶番の席を用意していただきありがとうございます、ラネル大統領殿、いや、元大統領と言った方が良いかな、貴方はここで壮絶な最期を迎えるのですからね。フフッ── ハハハハッ── ここに集まってきた愚かな者たちよ、本気でこんな小娘が連邦の国家元首として相応しいと思っているのか! いや、相応しいわけがない! 連邦の大統領に相応しい人物とは、知恵、武勇、家柄、そして人望のあるこの私のような者なのだ!! アムリア王国などという小国の王族風情が、この私の上に立つなど天が認めるとでも思ったのか! 天はこの私にアムリア連邦の大統領になるように啓示した! それが答えだ!」
いきなりの発言にこの場が凍り付く。ザワザワとざわめきたつなか、ラネルがハリソン王に問う。
「貴方がこの混乱のクーデターの首謀者だったのですか?」
「クーデターだと……馬鹿な娘は、正義の鉄槌をクーデターなどというゲスな表現にしか表現できないようだ。我々の行いは天の意思だ! 神の行為だ! それが理解できないから、貴様らは無能だと言うんだ!」
もはや何を言ってるのか意味はわからないけど、これは悪人が自分が絶対的有利だと思い込んで、色々情報をしゃべってくれるパターンではないだろうか、ジャンもそれに気が付いたようで、アリュナたちを静止して事の成り行きを見守っている。
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