第525話 混乱の襲来
ジャンの読み通り、アムリア王国にいくつもの勢力が集まり始めた。しかし、すべてが元アムリア連邦なこともあり、どれが味方で、どれが敵だか判断が難しかった。
「敵味方が集まって来たのはいいけど、これからどうするんだジャン」
「まずはラネル大統領に呼びかけて貰う。それでどういう反応をするか見極めるとしよう」
「私はどのような呼びかけをすればいいいのですか?」
ジャンの意図がわからないラネルが困った顔でそう聞く。
「そうだな、アムリア連邦の忠実な者は、城下町の南部に集まれとかそんなとこでいいんじゃないか」
「なるほど、それで素直に集まった連中が味方なんだな」
「馬鹿野郎、そんな単純なわけねえだろ。敵の狙いはラネルの命を奪うことだ、味方のふりして近づいてくるに決まってるだろうが」
「じゃあ、呼びかけになんの意味があるんだよ」
「反応を見るって言ってるんだろ。いいか、本当にラネル大統領を心配して集まってきた連中ってのは何も考えてないもんだ、だから言われたことに素直に従い、すぐに動く。味方のふりして近づこうとする連中は、こちらの呼びかけに対して、どんな悪だくみをしてやろうかと考える時間がある。だから少し遅れて動き出すはずだ」
ジャンのこういった発想にはいつも感心させられる。ラネルも感心したように頷いていた。
すぐに準備が行われ、外部出力音を拡張して全ての勢力に聞こえるようにラネルがメッセージを伝えた。それを聞いた勢力の反応をじっくり見極めるように観察する。一番最初に動いたのは西側にいた勢力だ。それに続いて北東に布陣していた勢力も動く。二つの勢力に迷いはない。しかし、他の勢力はすぐには動かなかった。ジャンの言うように、ラネルの言葉を聞いて、何かを考えているように感じる。
少しの間をおいて、他の勢力の一部も動き始めた。一見、迷いのない行動に見えるが、ジャンが不審な動きを見逃さなかった。
「あの部隊はどうも動きが怪しいな……」
ジャンの言葉に続き、アリュナも指摘する。
「部隊の一部に武装解除する気がないものがいるようだね、まるで敵陣に向かうかのように緊張しているのがここからでもわかる」
表面上は集まる勢力に敵はいないはずだけど、一部の部隊が戦闘態勢のまま行動しているようだ。確かに常に武器を使える体制を保ったり、周りへの警戒を感じる。足運びにぎこちなさもみえるので、何かしらのプレッシャーを感じているのは間違いない。
味方の振りをして近づいてくる部隊とは別に、あきらかに敵意をむき出しにする勢力もいた。その勢力は、集合地点に集まることもなく、戦闘準備に入っている。いつ攻撃してきてもおかしくない状況だが、敵味方の様子をみているのか実行には移してこない。
「あれは完全にクーデター軍のようだな、敵意を隠さないのはこちらに紛れ込ませる部隊から目をそらさせるのが目的だろ」
「じゃあ、そろそろこちらも戦闘態勢に入った方がいいな」
「いや、まだだ。今、動けば集まっている友軍も疑心暗鬼にさせるだろ。もう少し待って、集合地点に集まるまで待った方がいい」
「だけど、それだと不意に攻撃されたら後手に回らないか!?」
「後手に回ったくらいで、このヤマトは沈まんよ。ラネルがこの艦にいる限りは安全だ」
ヤマトの装甲と耐久力はフガクの五倍以上と聞いているから、確かに大丈夫だとは思うけど、無防備で集中砲火浴びることにでもなったら、あまりいい気持ちはしないな。
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