第470話 説得の力/ジャン

無双鉄騎団を交えて南西国家同盟に対する対策が話し合われることになった。一傭兵が国家方針に関わる話し合いに参加するなんて異例中の異例だろうが、国のトップたちは気にもしていないようだ。


「それでジャン殿はどのようにお考えでしょうか」


現在のメルタリア王国軍のトップである司令官が、本当に知恵を借りたいといった感じで聞いてきた。


「同盟との戦いはなるべく避けた方がいいのは間違いない。エリシア帝国が妙な動きをして大陸全土に向けて動き出しているのは疑いようのない事実だ。これに対抗する為に同盟を組んで対抗するのは必然だろう。問題はその枠組みからメルタリア王国が外れていることだ。親エリシア国家でもないメルタリア王国がなぜそのようになっているのか……どうも裏で何かが動いているように感じる。まずはそれを突き止めるのが先決だろうな」

それを聞いてユーディンは考えるが思い当たる節すらないようだ。

「裏で動いている何かを突き止めると言っても、見当もつきませんね。諜報部には調査をさせていますが決定的な情報もなく、そんな人物がいたとしても、それが国なのか個人なのかすらわかりません……」


「ちょっと調査資料を見せてくれ」

もしかしたらと思い当たることがあった。それを確認する為に資料を手に取った。

「やはりそうか……」

この同盟を主導する国の一つによく知った名があった。さらにその国から広がったと思われる情報に、裏工作の痕跡を見つける。やはり、あいつか……あいつならこの程度の裏工作なら楽にこなすし、間違いないかもしれない。


「何かわかったのですか!?」


「証拠も無いし、これから調べる必要があるけが、ある仮説は立てられた」

「仮説とはなんですかなジャン殿! 我々にもわかるように説明して下され」


「メルタリア王国が孤立しているのは、おそらくエリシア帝国の工作によるものだろう。エリシア帝国の指示で裏工作を実行しているのは南西国家同盟の主要国の一つ、ダーラン共和国のブッダルガ大統領が濃厚だな」


「ブッダルガ大統領……それはありえません。ダーランのブッダルガ大統領は反エリシア帝国の急先鋒の人物ですよ。まさかそんな人物がエリシア帝国の為に動くとは到底思えません」

「ふんっ、それは間違った情報だ。あいつは昔から、強く大きいエリシア帝国に憧れを持っていた。文化や歴史にのめり込んでいたし、もしエリシア帝国から秘密裏に接触があったら間違いなく興味を示す」


「なんだいジャン、あんたその大統領のこと知ってるのかい?」

言い回しに疑問を持ったアリュナがそう聞く。

「ああ、昔ちょっとな」

あまり詳細は話したくなかったのでさらっとそう答える。俺と一国の大統領が昔馴染みと言う事でみんな少し驚いていたが、話し合いの要点はそこではないこともあり、話し合いは続く。


「だとすると、ダーランが裏で動いて、メルタリア王国を孤立されようと画策したと言う事なのですね」

「情報の動きや国々の対応を見てもその可能性は高い。まあ、確認する必要はあるがな」


気は進まないが、やはりダーランに帰る必要があるかもしれない……そう考えると、昔の事を思い出して気分が重くなっていく。

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