第325話 決壊/ナナミ
ナナミの守る北門にも敵が殺到してきていた。一緒に北を守るのは、ファルマとロルゴ、それに練習生部隊の50人くらいの人たちにアムリア連邦軍の魔導機が1000機くらいだった。味方が大勢いるように見えるけど、攻めてくる敵はもっと多い。
殺到してくる敵軍に向けて、防壁上部に設置されているサラマンダー砲から炎の砲弾が放たれる。着弾した場所から爆炎が広がり、複数の敵機が吹き飛ぶ。
休みなくサラマンダー砲の攻撃は続いて敵機を倒していくけど、敵の数が多すぎて敵軍の勢いを止めるまでにはいかない。
北門まで到着した敵の魔導機部隊が門を破壊始めた。防壁上からアロー部隊が攻撃をするけど、盾などで防がれ、効果的ではなかった。
「門が持たない! ナナミ、敵が入ってくるよ!」
上空からアローを撃ちながらファルマがそう警告する。敵が侵入してくるのに備えて、私とロルゴ、練習生部隊は入り口の防御を固める。ここで敵を防がないと負けちゃう!
爆発したような勢いで門が吹き飛ばされる。そしてワラワラと敵機が基地内へと突撃してきた。ナナミたちは半円の陣形になってそれを迎え撃った。
十機くらいの敵機を破壊した頃合いに、もう見たくないと思っていた敵が姿を現せた。昨日、散々戦った相手、確かケイマイオスという人の魔導機、それが凄い勢いでナナミに接近してきた。
「会いたかったぞ、金色の魔導機!」
執念からか、自己主張が強いのか、外部出力音でそう叫んで剣で斬りつけてきた。ナナミは盾でその攻撃を防いで押し返す。
「いいぞ! やはりお前は最高だ!!」
その言い回しが気持ち悪い。返事をする気にもなれないし、そんな余裕もなかった。
ケイマイオスは剣をブンブン振り回しながらナナミに攻撃を繰り返す。盾と剣でそれを防ぎながら隙を狙ってこちらも攻撃する。大雑把な動きに見えるけど、やはりこの人は強い。ナナミの攻撃は全て防がれた。
だけど、昨日みたいな長い戦いをしている余裕はない。一気に勝負を決めるよ!
ケイマイオスの剣をかいくぐり、とっておきの技を発動する。チャンスは一度だけ、たぶん、これくらいの力量の人には二度はきかない奇襲である。失敗するとこちらが危険になるかもしれない。だけど、今はそんな心配してられない。
「ギガ・グラヴィティ!!」
重力の魔導撃を発動する。ヴァジュラの周りの重力が一時的に数百倍に上がる。不意の変化に対応しきれないケイマイオスの機体がバランスを崩す。その隙を狙って剣を振り下ろした。
高重力の中では、流石のケイマイオスもその攻撃は防げなかった。首元から剣は深く斬り刺さる。
「くっ……そんな秘策があるとは油断した……」
剣を引きく抜く、ケイマイオスの機体はそのまま崩れるように倒れた。
「やった! 魔神ケイマイオスを倒したよ!」
誰かに褒めてもらいたくてそう言ったのだけど、返ってきたのはファルマの強い口調の危険を知らせるセリフだった。
「ナナミ! 危ない!」
言葉に反応してとっさに盾を構えた。すると強い衝撃が盾に伝わり、ヴァジュラは吹き飛ばされる。
「いたたたっ……」
見ると、すぐ近くに少し前に倒した四足歩行の魔導機が接近していた。反応がもう少し遅れていたら危なかったかもしれない。
四足歩行が暴れまわっている間に、倒れたケイマイオスの機体が運ばれていく。さらに敵の増援がなだれ込んできた。周りを敵機が埋め尽くしていく。
「ナナミ、ロルゴ! 左手の味方がやばいよ!」
見ると左側を守っていた重装魔導機が四足歩行にやられ、半円の陣形の一部が崩れていた。敵はその崩れた箇所からどんどん基地の中へと入り広がっていく。
ケイマイオスは倒したけど、戦況は最悪の方向へと向かっていた。
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