第321話 殿での戦い/ジャン

味方を基地まで撤退させる為に、無双鉄騎団と練習生部隊で敵を押さえることになった。しかし、今だにナナミとケイマイオスとの戦いは決着は付いておらず。激しい攻防を繰り広げている。


「ナナミ、撤退の殿を務める為に陣形を整える。前衛を後退させるから、お前も隙をみてそいつから離脱してくれ」

「簡単に言わないでよ、ジャン! この人、隙なんてないんだから!」

「わかってる。相手は天下十二傑のケイマイオスだ。逃げるのも難しいのはわかるがお前ならできる!」

「もう、言うのは簡単だよね」


「ファルマ、ナナミの離脱を手伝ってやれ」

「うん、わかった」


前衛を後退させたタイミングで、ムサシと他のライドキャリアから艦砲射撃をおこない敵を牽制する。アロー部隊で敵を抑えながらジワジワと全軍を後ろに下がらせる。


ナナミのヴァジュラも強引にケイマイオスから逃げようとする。盾をぶつけるように激しく体当たりして相手を怯ませると、後ろに向かって走り出した。ケイマイオスは好敵手を逃がすまいと追いかけてくる。その追撃をファルマのアローが妨害した。ケイマイオスの機体に、ファルマの魔導撃強化アローが直撃する。さすがのケイマイオスでもその一撃には面食らったのか、ナナミへの追撃をやめて警戒しながら後ろに下がった。


アムリア連邦軍の全軍が撤退を始めた。予定通りの行動ではあるのだが、撤退を追撃する敵軍を、俺たちに擦り付けるように後ろに行軍する。その為に味方が後退していく毎に、周りは敵軍だらけになっていった。


「前衛は密集して後ろにさがれ! 包囲されたら終わりだ。絶対に回り込ませるな!」


他の軍へと支援に回っていたアリュナや清音たちも殿に加わる。やはり無双鉄騎団のメンバーが揃うと安心感がある。絶望的な大軍の追撃にもなんとかなると思えてきた。


「押し返す必要はないぞ! 敵の攻撃をいなして少しずつさがれ!」


後退させながら敵の攻撃を防ぐ。敵艦からの砲撃を牽制する為に、サラマンダー主砲は後ろの敵艦に向けて砲撃する。


「ジャン殿、撤退した部隊の大半が基地へ到着しました。無双鉄騎団も無理をせず後退してください」


指揮官の一人からそう連絡が入る。もちろんそうしたいが、敵を抑えながらい急いで後退するのは難しい。


基地には防衛用のサラマンダー主砲や防壁がある。基地の近くまでいけば援護もあるだろうしなんとかなると思うが……。


「ジャン、右から敵が回り込んできてるよ!」

「なに! そりゃヤバイな……アリュナ、エミナ、妨害できそうか!?」

「なんとかしてみる」


敵部隊に後ろに回り込まれて包囲されたら、味方と孤立してしまい一巻の終わりだ。すぐに二人に妨害を指示する。


「足の遅い重装魔導機は先に基地へ向かって撤退しろ。機動力の高い機体は敵をかく乱して追撃を妨害してくれ!」


今の撤退スピードでは逃げ切るのは難しい。先に足の遅い重装魔導機を逃がすことで、振り切ることを考えていた。


「ペフー何してる! お前は先に基地に向かえ!」

ペフーは一番後方で敵の追撃を防いでいた。すごく助かってはいるが、このままでは足の遅いギガンテスが取り残されてしまう。

「まだ、いけます! もう少し敵を抑えます!」

「いや、ダメだ! 早く後ろへ後退しろ! 清音、すまないがペフーの代わりに最後尾を頼む」


清音は俺の指示にすぐに動いた。敵機を斬り伏せながら殿のさらに最後尾へと移動していく。

「ペフー交代します。ジャンの言うようにあなたは後退しなさい」

「しっ、しかし……」

「いいから言う通りにしなさい! このままでは後退スピードをあげれないでしょ!」

「はっ、はい!」


清音に怒られ、ようやくペフーは撤退を始めた。真面目で責任感の強いのは分かるが、自分を犠牲にするようなやりかたは俺は嫌いだ。味方の為に何かをするのと同じくらいに、自分の身の安全も考えないとダメだろう。

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