第264話 悪魔の技術/渚

「いまからハッチを開けるよ」

アリュナはフガクに持ち帰った敵魔導機のハッチをこじ開ける。中にいる敵のライダーを警戒して、屈強な二人のメカニックが近くで待ち構える。

ハッチが開くと、転がるようにライダーが出てきた。屈強な二人がすぐに拘束しようと近づいた。しかし、ライダーに触れた男が首を横に振りこう言った。

「ダメだ。もう死んでいる」


「嘘でしょう? 魔導機の破損具合からみても死亡している可能性は低いと思うけど」

「ちょっと様子が変だ。外傷がないから死んだのは別の理由だろう」


不思議な状況にその場が少し混乱する。


「ちょっと僕に見せてくれるか」

皆が戸惑っているところへ、コツコツと歩く音を響かせてラフシャルが現れた。ラフシャルは死体を調べると、眉間にしわをよせ首を横に振る。

「死んだ原因がわかったのか?」

ジャンの質問にラフシャルは意外な答えを言った。

「死因は過労死だよ。極度の疲労で亡くなっている」


「過労死だ⁈ おいおい、戦闘してて疲れて死んだっていうのか?」

「そうなるね」

「そんな馬鹿なことあるのかよ」


ラフシャルは次に捕獲した敵魔導機を調べ始めた。少ししらべたところで何かが分かったみたいだ。

「これはルシファーの仕業だな……こんな非道な魔導機を作れるのは奴しかいない。この魔導機なら乗っていたライダーが死んだのも納得する」

「どういうことだ、ラフシャル。説明しろよ」

「こいつは人の魂を食らう悪魔の魔導機だよ。強力な力を与える代わりに、代償として搭乗者の生命力を奪う」

「そんなことができるのか⁉」

「古代文明の技術なら可能だけど、ライダーを大事に考えていた当時の技術者は誰も手を出さなかった悪魔の技術だよ。ルシファーは密かに研究を進めたんだな」


「そうなると、厄介だね。敵が言っていたニトロ隊ってのが、全員この悪魔の機体に乗ってるてことになるかもしれないね」

「ニトロ隊? そう言ってたのか!?」

アリュナの言葉にラフシャルが反応する。

「ああ、そう言ってたよ。ラフシャル、何か知ってるのかい?」

「ニトロ隊はしらないけど、ニトロの言葉には思い当たることがある」


ラフシャルはそう言いながら敵の死体をあらためて調べ始める。

「やっぱりそうか、これは酷い……ニトロルーディアで強制的にルーディア値を強化されている。ニトロルーディアで心身ともにボロボロにされ、さらに悪魔の魔導機に乗せられ……ルシファーめ! 人をなんだと思ってるんだ!!」


普段、大人しそうなラフシャルが感情を高ぶらせている。それより、さっきから名前がでているルシファーっていったい誰だろう。

「ルシファーって誰ですか?」

私が隣にいたエミナに聞くと彼女が答えてくれる。

「ラフシャルの兄弟子で人類を滅ぼそうとしている悪い奴よ」

「人類を滅ぼすって……そんな人がいるんですか!」

「そう、だから私たちは強くならないといけないの……」


いつの間にか無双鉄騎団は大きな使命を背負っていたのを知った。


「僕は決めたよ。無双鉄騎団を本気で強化する。ロストテクノロジーを使用するのには抵抗があったけど、悪魔の技術を使用するルシファーを相手に戦うには出し惜しみしている場合じゃない」


ラフシャルの宣言をみんな黙って聞いている。

「みんなごめん……大変な思いをさせるかもしれない。でもロストテクノロジーを託せるのは信頼できるこの無双鉄騎団だけなんだ」


「ちっ、金にならないことはやりたくねえけどよ、人類が滅ぼされたんじゃ意味がねえからな。商売の邪魔にならない程度に力を貸してやるよ」

ジャンの言葉にみんな頷く。

「関わってしまったものは仕方ないわね。まずは勇太と合流することが先決だけど、ルシファーだろうがなんだろうが、相手にしてあげるわ」


無双鉄騎団の面々は悪魔の技術を躊躇なく使う敵に対して、戦う意志を示す。勇太もこの場にいたらそれに同意しただろう。勇太が戦うなら私も……そんなふうに考えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る