第240話 赤い道
ボロボロになったナマクラから外に出て周りを見渡す。どうやら三傑はどこかへ移動したようで近くには見当たらない。もしかしたらエリシア軍と剣豪団が戦っている戦場へと移動したのかもしれない。
清音の言葉を思い出して、オヤジのことが心配になった。三傑が向かった戦場も気になるが、魔導機のない今の状態ではどうすることもできない。とりあえず清音の向かった方角へと向かうことにした。
森の中を進んでいくと、すぐにエクスカリバーの姿が見えてきた。おそらく清音もそこに向かっただろうと思い、歩みを早めて先を急いだ。
エクスカリバーのハッチは開いていた。コックピットを覗くと、そこには何かを調べている清音がいた。オヤジがいないので、エクスカリバーの周りを確認するがオヤジの姿は見当たらない。
「勇太……」
清音が俺に気がついた。怪訝そうな表情で俺の名を呼ぶ。
「オヤジはいないのか?」
「座席には温もりはないから、エクスカリバーから出てある程度の時間は経過しているみたい」
「だとするとちょっとようをたしにいったとかそんな状況じゃないな」
「それより、勇太……三傑との戦闘を一人に任せてごめんなさい……」
「いや、やっぱり三傑相手にナマクラではキツかったよ。ナマクラはボロボロに破壊されたし、ちょっと危なかった」
「ごめんなさい……私がやられてなければ……」
「いや、二人だったとしてもナマクラでは限界があったからな。三傑相手にはキツかっただろう」
「その三傑はどうなったの?」
「もうこの辺りにはいないみたいだ。おそらくエリシア帝国と剣豪団の戦場へと向かったんだと思う」
「だとすれば急いで父上を探さないと……三傑が相手では、剣豪団でも長くは持たない。幸いエクスカリバーは健在だし、父上がいればなんとかなります」
その力強い言葉からは、清音のオヤジに倒する絶対的な信頼感が見える。確かに三傑相手でもオヤジならなんとかしそうだ。
「しかし、オヤジの奴どこいったのやら……ちょっとそこら辺を探してみるか」
「そうね……」
俺と清音はエクスカリバーの周りを探し始めた。二手に分かれて周りを探索する。そしてエクスカリバーから少し離れた開けた場所で、清音が痕跡が見つけた。俺もその場所に駆けつける。
「エクスカリバーとは別の魔導機の足跡……これはスカルフィのアロンダイトのものだと思う」
「やっぱり、オヤジとスカルフィは会っていたんだな。だとすればスカルフィが、いやアロンダイトの姿が見えないってどう言うことだ」
「もうこの辺りにはスカルフィはいないってことだと思います」
「わからないな……何がどうなってるんだよ」
俺は状況を予測することを諦め、さらにその周りを調べる。オヤジが見つかれば理由はわかるだろう。清音も同じ考えのようで黙って周辺を調べ始めた。
「勇太!」
アロンダイトの足跡から少し入った場所を調べていた清音から叫び声のような悲痛な口調で呼ばれた。急いで清音のもとへいく。
「どうした!」
「これを見て……」
清音が指差すのは葉っぱについた赤い液体であった。
「血なのか」
「はい……」
「くっ……勘弁してくれよ……」
血が見つかったからといってそれがオヤジのものとは限らない。だけど、嫌な予感だけは大きくなっていく。ドキドキと心臓の鼓動が早くなり、悪い想像が膨らんできた。
「血の痕跡が続いています……」
清音と俺は、その痕跡を追っていった。頼むからこれがオヤジの血じゃなかってくれ……そう願いながら進んだ。
しかし、その願いは叶わなかった。血の痕跡の先に進むほどに嫌な匂いがしてくる。匂いはどんどん強くなっていく。そして、木々をかき分けてたどり着いた岩場にオヤジはいた。オヤジの周りは真っ赤な血の池になっていた。それを見た瞬間、ゾッと背筋に悪寒が走る。あまりの衝撃に言葉が出ない。それは清音も同じようで絶句していた。
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