第222話 急報
翌日、日が昇ると同時にエリシア軍の再攻撃が始まった。三国同盟軍はそれを迎え撃つ。
城壁に設置されたバリスタ砲門を利用する為に、エリシア軍を深く誘い込んでの戦いとなった。城壁と、多くの魔導機を防御に回して守りを固める。剣豪団は初日と違い、中央で敵を抑え込むのではなく、敵の本陣を狙って側面からエリシア軍を強襲した。
オヤジと清音が切り込んで敵の陣形を崩壊させる。剣豪団の団員たちがバラバラになった敵機を確実に仕留めていく。エリシア軍は強兵というが、剣豪団には関係ないようだ。一対一の戦闘では敵を圧倒している。
エリシア軍も、まさか剣豪団が本陣を狙ってくるとは思っていなかったようで慌てているようだ。混乱して対応が後手に回っていた。
「よし! 本陣までの防御は薄い! このまま一気に敵陣を叩く!」
本陣を叩けば、エリシア侵攻軍も撤退するだろう。三傑の動きがわからない現状で、目に見える敵軍だけでも排除できるのは大きい。
しかし、いくら三傑不在と言っても、さすがはエリシア帝国の正規軍である。剣豪団の強襲に一時的に混乱していたがすぐに持ち直し、強固な防衛ラインを形成してきた。
「父上、後方から重魔導機団が上がってきたようです。さらに左翼の機動部隊も、我々を包囲するように展開してきました」
「うむ……少し侮りすぎたようだな。仕方ない。無理をして団員に被害を出すのもバカらしい。一度下がるとしよう。清音。殿は俺に任せて、皆を後方へ下がらせろ」
「わかりました、父上。お気をつけて」
オヤジと数人の上位団員が後方で敵を抑えている間、剣豪団は城壁前まで撤退した。
城壁前では防衛する三国同盟軍と、城壁を破壊しようとするエリシア攻撃隊の間で激しい戦いが繰り広げられていた。剣豪団は三国同盟軍に助力しながらオヤジが帰ってくるのを待っていた。
「遅い! どうしたのかしら、通信もしてこない…… 父上が足止めされるような状況でもないのに何をしてるのかしら」
敵を斬り倒しながら、まだ戻ってこないオヤジを心配してか清音がそう言う。
「オヤジのことだから心配ないだろ。それより城壁前まで迫ってきている敵機が増えてきたぞ。陣形を立て直して応戦した方がいいんじゃないか」
「確かにそうね。スカルフィ。ボクデン隊とカゲヒサ隊の隊列を組み直して」
「清音。それより問題が起こった。ターミハルの司令部より緊急連絡で情報が入ってきた。バルミハルの王都がエリシア軍に攻撃されているそうだ」
スカルフィのその言葉に、表情の見えない通信上でも清音が驚いているのが分かった。
「まさか! バルミハルは三国同盟の中では唯一、エリシア帝国と隣接していない国家ですよ! どうやって侵攻したと言うのですか!」
「ハバロ、ガスタルを経由して南から侵攻したようだ」
「それもおかしい話でしょう。ハバロもガスタルも反エリシア国家ですよ! そう簡単にエリシア軍を通すはずがありません!」
「……ハバロもガスタルもすでに陥落していると考えれば説明できるだろう」
「いくらなんでも隣国が陥落したら情報が入ってくるはず! 侵攻の情報すらないのに……」
「侵攻から1〜2日ほどで陥落したとすればどうだ? こちらに情報が来る前に侵攻を進めることができるんじゃないか」
「まさか! ハバロもガスタルも大国ではありませんが、魔導機1000機くらいを所有する軍事力は持っているはず。一日や二日で陥落するなんて……」
納得していない清音を、諭すような言葉をかけたのはスカルフィではなかった。真剣なオヤジの言葉が共通通信に響く。
「清音。いつも言っているだろう。自分の常識の範囲内だけで物事をみるなと」
「父上、ご無事で──」
「すまん、遅くなった。厄介そうな大型魔導機を見かけたので片付けていた」
「それより、ターミハルの緊急連絡の件、どうしますか?」
「スカルフィ。司令部はどうして欲しいと言っているのだ」
「剣豪団にはバルミハルへ救援へ向かって欲しいと要望が来ています」
「なるほど、バルミハルに三傑が現れたのだな」
「はい。バルミハルを攻撃しているエリシア軍を指揮しているのは三傑だとのことです」
「バルミハルが落ちれば三国同盟全てが危うくなる── ここの守りは三国同盟の戦力でなんとかなるか…… よし、剣豪団は急ぎバルミハルへ向かうぞ!」
「はい!」
剣豪団がいなくなっても簡単には城塞都市は落ちないと判断して、剣豪団はバルミハル向かうことになった。いよいよ、天下十二結同士の戦いになりそうだ。
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