第183話 巨獣の声
巨獣の封印の一つが解かれてしまった。敵は目的を達成して、無意味な戦闘を避け逃亡した。すぐに追撃しようとしたのだが、敵のライドキャリアから無数の爆発するアローの攻撃を受けて足止めされる。
「追いかけるよ!」
ライドキャリアからの攻撃が止むとアリュナがそう言う。すぐに敵のライドキャリアを追いかけようと走り出したが、周辺に不気味な唸り声のようなものが鳴り響いて足を止められた。
「なっ、なんだこれは」
「ナナミ、気持ち悪いよ」
「嫌な声だね……まるで悪魔の吐息のよう……」
「巨獣の咆哮のようです。封印の一部が解かれて、眠っていた巨獣が目を覚ましたようです」
「えっ、これって巨獣の声なのか、フェリ」
「はい、複数体いるようです。Sレベル個体などの強力な巨獣は危険ですので気をつけてください」
「アリュナ、ナナミ、巨獣が何体か近くにいるみたいだから気をつけた方がいいみたいだぞ」
フェリの忠告を二人にも伝える。
「巨獣が近くにいるだって、そりゃ厄介だね」
「ナナミ、ちょっとだけ見たいかな……」
二人ともそれほど怖がってはないようだ。そんな二人が少しだけ頼もしく思える。
巨獣の存在に気を取られ、薄暗い地下空間と言うこともあり敵のライドキャリアを見失ってしまった。
「どうしようか、見失ってしまったな」
「どうしようもなにも追いかけるしかないでしょう」
「だけど、どっち行ったか分からないぞ」
「なに言ってるの、勇太、相手は巨獣の封印の解除が目的なのだから、次の目的地は決まってるじゃない」
「あっ、そうか、巨獣の封印の最後の一つの場所へ向かったのか」
「そっちにはジャンたちがいるから、そう簡単には事を進めることはできないはずよ、後を追って封印の解除を阻止しましょう」
「フェリ、巨獣の封印の最後の一つの場所がわかるか?」
「はい、マスター、案内できます」
「よし、じゃあ、最短ルートでそこまで案内してくれ」
「了解しました」
しかし、最短ルートと言ったのがまずかったのか、フェリの案内するルートは険しい洞窟を移動するものだった──地下の滝や水路を乗り越えて進む。
さらに進みにくい地形より厄介な障害も現れてしまった。
「マスター、危険な反応です。強力な巨獣が接近しています」
「嘘だろ……どっちから近づいてるんだ」
「前方500m、もう少しで目視できます」
確かにドドドッと激しい音を立てながら何かが近づいてきているのが見える。大きさは魔導機の十倍ほどだろうか、狭い洞窟内をギュウギュウに塞ぐようにこちらに迫っていた。
「うわっ、でか!」
「くっ、もう逃げられないね、やるしかないか」
「すごくおっきいね……倒せるかな」
「とにかく俺が奴の動きを止めるから、二人で攻撃してくれ」
「了解〜」
突進してくる巨獣は、象のようにどっしりとした体型で、重そうな体を六本の大きな足で支えていた。頭部は恐竜のような虫のような妙な感じで、無茶苦茶怖い。
怖い顔から目を逸らしながら、巨獣の突進をアルレオで受け止める。ギギギッとボディーが軋むが、なんとか巨獣の動きを止めることができた。
俺が巨獣を止めている隙に、アリュナとナナミが攻撃する。体が大きく、一撃で致命傷を与えることはできないようだけど、足や体を斬りつけてダメージを与えていく。二人の攻撃が痛いのか、巨獣が咆哮をあげる。至近距離での巨獣の咆哮はかなりキツイ、鼓膜が破れそうなほどの爆音に耳を塞ぐ。
さらに巨獣は力を込めてアルレオを押しつぶそうと迫ってきた。アルレオの機体全体がミシミシと音を立ててその圧力に耐える。
「なんてパワーだよ……」
今まで感じたことない力に、流石にちょっと焦る。このままでは長く持たないと判断した俺は、戦法を変えることにした。巨獣を止めていた力を緩め、後ろに跳躍する。素早くマインゴーシュを構えて、閃光モードを発動した。
強烈な光が巨獣の目を捉える。今まで受けたことない光量が目に入り、巨獣は苦痛で狼狽た。さらに俺は無双モードへと移行して、両手に力を溜める。
「アリュナ、ナナミ、一気に倒すぞ!」
巨獣が狼狽ている間に、三人での一斉攻撃を繰り出した。
ナナミの剣が巨獣の腹を裂き、アリュナの双剣が首元を切り裂く。そしてとどめはアルレオのラッシュ攻撃である。光り輝く両拳を巨獣に何度も叩きつける。拳が当たる度に、巨獣の体はボコボコとふくらみ、衝撃で後ろへ後退していく。最後の一撃、渾身の力で拳を巨獣の頭部に打ち込むと、巨体が力なくその場に崩れ落ちた。
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