第133話 奇襲

今回の戦闘の作戦は一撃離脱。強襲攻撃後、すぐに撤退する手筈となった。まずはライドキャリアで敵の基地に接近、フガクとエチゴのバリスタの波状攻撃後に、無双鉄騎団を中心とした魔導機部隊を突入させる。基地奥深までは攻め入らず、基地の施設を破壊しながら反撃してきた魔導機を撃破していく。作戦時間は30分、時間経過で撤退を始める短期戦だ。


エモウ軍と無双鉄騎団のライドキャリアの船団が近づくと、ベルン前線基地は慌ただしく警報が鳴り響く。一気に加速して、バリスタの射程に入ると、フガク、エチゴの砲門が火を吹いた。


フガクのバリスタは四連式自動装填のバリスタが六門、一門につき二秒に一発のボムアローが撃ち出される。ボムアローは先端に衝撃を与えると爆発する爆裂石を装填していて、命中すると大きな爆発が起こった。


エチゴは二連式手動装填型のバリスタで連射速度はフガクのバリスタに劣るが、砲門が二十門もあり、火力では負けていなかった。


「よし、そろそろ魔導機部隊の出番だぞ、思いっきり暴れてこい!」


ジャンの号令で、味方のライドキャリアから魔導機が次々と出撃する。


フガク、エチゴのバリスタの波状攻撃により、敵基地のバリスタは大半が破壊されていたので、敵軍は迎撃の為に魔導機部隊を出撃させてきた。


「よし! リミッターを解除したアルレオの実力を試してみるか! ちょっと敵軍に突撃してみる」

新調したアイテムを試したくなるのは男の性と言うやつだろう……俺は敵軍に単騎で突撃しようとした。


「また、そんな無茶な事しようとして……ジャン、勇太を止めてよ!」

心配になったのかナナミがそうジャンに訴える。


「馬鹿は死ななきゃ治らねえよ、それに新しいアルレオのスペック確認は俺もしたいと思っていたし、死なねえ程度に行って来い!」


ジャンも承認したし、俺はアルレオの速度を上げて、一人、敵部隊に突撃した。


リミッターの解除でアルレオのパワーが上昇したので、機体の大きさに不釣り合いな大型魔導機用の巨大な剣を装備してみた。大型魔導機でも両手で振るうその大きな剣を俺は片手で持っていた。さらに同じ巨大な剣をもう一方の手に持ち、二刀流にする。巨大な剣を片手で軽々振り回すほどのパワーがあるからできる芸当だろう。


巨大な剣を振り回し、敵軍の真っ只中を突っ切る。アルレオの持つ剣は魔導機の背丈より大きく、片手の一振りで数体が吹き飛ぶ。それを両手を振り回しながら敵を蹴散らしていくものだから、恐怖を感じたのか俺の周りから敵が離れていく。


俺は加速して逃げる敵機に接近して斬り倒していく。やはり前のアルレオに比べてスピード、パワーが段違いにあがっている。操作が軽く、イメージの伝達も早いように感じていた。だけど、やはりヴィクトゥルフと比べたら少し物足りない感じはある。


「勇太、範囲攻撃をそこら辺に打ち込みますから少し後退するですわ」


リンネカルロが範囲攻撃を敵の密集している箇所に打ち込むそうだ。俺は雷撃に巻き込まれないように後退した。


俺が後ろに下がった瞬間、数十機の敵機を絡めとるように雷撃の嵐が巻き起こる。バチバチと稲光が起こる度に、敵機が激しい音を立ってて爆発していく。やはり多数を相手にした時はオーディンの範囲攻撃は便利だな……


アリュナ、ナナミ、エミナ、アーサーの機体を前衛に、エモウ軍も攻撃に参加する。先鋒がしっかりしていると軍全体が強固になるのか、圧倒的な勢いで、敵軍を駆逐して行った。


しかし、みんな体があったまってきて、これからだって時に時間がきたようだ。


「30分経過! 全軍撤退するぞ、ライドキャリアに戻れ」

「おい、ジャン。かなり押してるしこのまま制圧してもいいんじゃないか」

圧倒的にこちらが有利だと思ったのでそう助言したが、ジャンは同意しなかった。

「馬鹿野郎! このまま深追いすると戦闘力の高いお前らはいいけど、エモウ軍に損害が出るんだよ。十分、敵に損害は与えたし目的達成しているから、無理する必要はねえ!」


確かにそうだな、エモウ軍のことを考えてなかった。俺は最後に近くにいた敵機を斬り倒すとフガクに向かって撤退を開始した。



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