第125話 三者三様
バラヌカでの初日が終わり、次の日──なぜか俺はリンネカルロと買い物に出ることが決まっていた。明日はアリュナで、明後日はナナミだそうだ。
「勇太、次はあっちですわ」
散々、買い物に付き合わされ、大量に購入した商品の荷物持ちをさせられていた。どうやら俺と買い物に来たのはそれが目的のようだ。力だけならロルゴの方が遥かにあるから、彼を誘えばいいのに……
「リンネカルロ……ちょっと休もうぜ」
重い荷物に体が悲鳴を上げている、一旦休まないとちょっと辛くなってきた。
「し……仕方ないですわね……そ、それじゃ、あそこで休憩しましょう!」
リンネカルロはなぜか顔を真っ赤にして大きなホテルを指差してそう言った。
「いや、そこまでの大休憩は必要ないよ、ちょっと座りたいだけだから、そこのお茶屋で十分だ」
「そ……そうですわね、お茶にしましょう」
リンネカルロはちょっと残念そうに同意する。
お茶屋では俺はコーヒーに似ている炭豆茶を注文して、リンネカルロはフルーツたっぷりの果実水を注文した。
「炭豆茶なんて美味しいですの?」
「美味しい美味しくないじゃない、雰囲気が大事なんだ」
「よくわかりませんわね」
「そっちはどうなんだ、その器を覆い隠すフルーツてんこ盛りのジュースは」
「まあまあですわ」
正直ここの炭豆茶はイマイチだった事もあり、無性にリンネカルロの飲んでいるジュースが飲みたくなった。
「ちょっと味見させてくれ」
そう言ってリンネカルロのジュースを取り上げた。彼女の使っていたストローを使うのは悪いと思い、グラスに口をつけてそのまま一口頂く。
「うん、よく冷えてて美味しいな」
「た……確かによく冷えてますわね」
そう言いながらリンネカルロは俺と同じようにグラスに口を付けて飲み始めた。
「あれ、ストロー使わないの?」
「ゆ……勇太がこうやって飲んでるのが美味しそうに見えたので、真似してみただけですわ!」
ちょっと怒った感じでそう言われる。何か悪い事言ったかな……
次の日、今日はアリュナとお出かけである。
「アリュナ、今日はどこ行くんだ?」
「いいとこ、勇太と二人っきりになれるところだよ」
アリュナは街の商店で食品など色々買い込むと、ライドホバーをレンタルした。
そのままライドホバーで走り、街の郊外までやってきた。そこは湖の辺りで自然豊かな場所であった。
「ほら、勇太、そっち持って」
「ここか?」
アリュナはそこにテントを張り始めた。どうやらここでキャンプをするらしい。
「こっちの世界にもキャンプって文化があるんだな」
「昔に地球人が広めたらしいわよ」
「あっ、なるほど、そう言うことか」
テントを張ると、次は火を起こし、キャンプ飯を作り始めた。まあ、キャンプ飯と言っても調理は豪快と言うか単純、肉を直火で焼いたり、野菜を切らずに火に当てて焼いたりとそんな感じだ。
飯ができると、二人で椅子に座り、湖を見ながらそれを食べる。アリュナはよく冷えたお酒を飲みながらリラックスしているようだ。
「勇太、もうこっちの世界には慣れた?」
不意にそう聞いてきた。
「そうだな、慣れたと言えば慣れたかな、特に不便に思う事もないし、変なストレスもないから適応しているみたいだ」
「そう、ならいいんだけど、困った事があったらいつでも言いなよ」
「わかってる、その時は相談するよ」
無双鉄騎団で何かを相談するならアリュナかジャンになるだろうな……なんとなくそう思った。
今日は朝からナナミがご機嫌だ。俺とのお出かけをすごく楽しみのしていたようで、まだ日が出ていない時間に叩き起こされた。
「勇太〜! ほら、今日はナナミとずっと一緒だよ」
「わかったよ、最近、あまり二人で遊ぶ時間がなかったからな、今日は思いっきり楽しもう!」
俺がそう言うと、ナナミは嬉しそうに頷いた。
ナナミが最初に行きたがったのは動物園であった。この世界にもそんな施設があるんだと、少し嬉しかった。この世界の動物だけど、やはり異世界だけあって地球の動物とは大きく異なっていた。
「可愛いよね♪」
「……そうだな」
俺の美的感覚がおかしいのか、ちっとも可愛いとは思わなかったけど、ナナミは嬉しそうに見ているので良しとしよう。
動物と触れ合えるエリアで、小動物に餌をやりながらナナミがこう聞いてきた。
「勇太は家族でこう言うところ来たりしたの?」
「そうだな、たまにだけど行ったりしたよ」
ほとんど渚の家族と一緒だったけど、ごく一般的な頻度で旅行などは行ってたな。
「そうだよね……ナナミはそんなの無かったから……」
あっ、しまった、ナナミは家族に売られたくらいだからそんなイベントあるわけない。俺は慌ててフォローする。
「だったらこれからはいっぱい、こういう所来ないとな、無双鉄騎団はもう家族みたいなもんだろ、今度はみんなも連れてくるか」
そう言うと、一瞬、小動物に餌をあげていた手が止まるが、すぐに笑顔になってこう言った。
「そうだね、ファルマやロルゴと一緒も楽しいかも」
過去が辛かった分、未来はもっと良いものにしてあげたいと思った。
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