第120話 大賢者の祠/結衣
「この岩場、明らかに人工的に手を入れた形跡が見られるわ」
ブリュレ博士がそう言いながら、幾つもの岩が積み上げられた場所をウロウロする。他の二人の博士に何やら指示を出してそこを調べ始めた。
「結衣、博士たちの調査中の安全を確保するわよ。魔導機で周辺を探索しましょう」
メアリーの言葉で、護衛のライダーたちはすぐに準備を始め、魔導機を出撃させる。その場に三機の魔導機を残し、他の魔導機は周辺を探索する為に散っていった。
しばらく周辺を警戒しながらエルヴァラで回っていると、言霊箱から通信が入ってきた。
「結衣、博士たちが何か見つけたみたい。魔導機の手が必要だから戻ってきて」
メアリーに言われ、私は博士たちが調べている岩場に戻った。全ての魔導機が戻ってきていて、何をするかと思ったのだが……
「この岩の下に何かある、悪いけど魔導機でこの岩を全て退かして頂戴」
と博士は簡単に言うが、魔導機くらいはある岩が無数に積み上げられている。これはかなりの作業になりそうだ。
──2時間ほど、岩の撤去作業を続けた結果、岩に埋もれていたそれが姿を現した。
「有ったわ! 間違いない! 古代文明の遺跡よ」
姿を現したのは明らかに人工的な黒い石碑で、何かの文字が書かれている。ブリュレ博士は何かのメモを見ながらそれを解読していく。
「四の石碑……なるほど、結ぶ点が大賢者の……」
ブツブツ何かを言いながら解読すると、二人の博士を呼んでまた何かを話し始めた。そして結論が出た時にはもう日が暮れていた。
「ブリュレ博士、それでその石碑には何が書かれているんですか」
メアリーが痺れを切らせてそう尋ねる。
「それはライドキャリアに戻って話しましょう」
暗くなり、調査もできなくなったので、ライドキャリアへ引き上げることになった。ライドキャリアのミーティングルームで、今後の調査方針が告げられる。
「石碑には、他に三の石碑があることが書かれてました。そして四の石碑が示す場所に、大賢者の祠の入り口があるとも記されています」
「まだ、三つも探さないといけねえのかよ、骨が折れるな」
エンリケが何かの飲み物を飲みながら面倒臭そうにそう言う。
「残り三の石碑ですが、おおよその位置は予想できます。明日はその辺りを捜索しましょう」
石碑に書かれた内容から、他の石碑の大体の位置は予想できるようだ、虱潰しに探すよりは時間の短縮ができそうであった。
「ブリュレ博士、博士は大賢者の祠に、大賢者が本当に眠っていると思っていますか」
食事中にメアリーがブリュレ博士にそう尋ねた。
「私は十年、大賢者の祠について調べているけど、あらゆる文献が示すのは大賢者の祠に何かがあると言うことだけよ、そこに大賢者が眠るかどうかは私にも判断できない。だけど、だからこそワクワクするのよ、そこに何があるか、本当に大賢者が眠っているのか、その真実を自分の目で確かめるのよ」
「眠ってるのが大賢者ならいいけどな、巨獣とかとんでもない怪物がわんさか出てきたらたまったもんじゃねえな」
「その可能性もありますよ、大賢者の祠から巨獣が飛び出してくるのも十分考えられます」
怖いことを言う……ルーディア値10万のライダーたちが戦っていたかもしれない巨獣、そんな存在に私は勝てるのだろうか……
次の日──テンポ良く予想されるポイントを捜索して、石碑を次々と発見していった。流石はブリュレ博士である、どう言う予想かわからないけど、かなりの精度で石碑の場所を見つけていった。
「石碑はこれで最後ですね……ふむふむ、やはり大賢者の祠はあの辺りですか……」
最後の石碑を見つけると、ブリュレ博士は何かの結論に達したようだ。
「わかったんですか、ブリュレ博士」
「はい、特定できました、すぐに向かいましょう」
ブリュレ博士の案内で向かった場所は、森の中にある大きな湖だった。
「ここが大賢者の祠の入り口です」
「湖の中に入り口があるんですか?」
「どうでしょう、それは調べてみないとわからないわ。とりあえず潜ってみましょう」
そう言うと、ブリュレ博士は服を脱ぎ出した。私は慌ててエルヴァラの手でそれを隠す。
「ありがとう、結衣、だけど隠す必要はないわ」
服を脱ぐと下にはすでに水着を着用していた。
「行き先が湖だってには分かってたからライドキャリアですでに着替えてたのよ、だけどその気持ちは嬉しいわ」
ブリュレ博士はそう言うと、エルヴァラの手を避けて、湖の中へ入っていった。
しばらくするとブリュレ博士が戻ってきて、こう指示を出す。
「湖の中に大きな堰があるわ、魔導機で潜ってあれを取り除いて」
「よし、俺が行こう、待ってろ」
エンリケはそう言うと、魔導機で湖の中へと入っていった。エンリケが湖に入ってすぐに、ゴゴゴッ……と唸り声のような音が響き始めて、湖の中心に渦が生まれた。そして荒れる湖からエンリケが姿を現す。
「すげーぞ、湖の中が真っ二つに割れた始めた!」
その言葉は大袈裟でも何でもないことはすぐに証明された。湖は外から見ていても分かるように、二つにわかれ始めたのだ。
「見つけたわ、大賢者ラフシャルの祠を……」
ブリュレ博士は二つに割れる湖を見ながら、そう呟いた。
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