第115話 あみだ戦
「ジャン、どうした、何かあったのか?」
ブリッジに行くと、無双鉄騎団の全員が集まっていた。
「いや、大事な事を決めないといけないだろ」
「大事な事?」
「そうだよ、ここが俺たちの新しい家になるんだぞ、家には自分の部屋が必要だろ?」
「あっ、部屋決めか、だけど、このライドキャリアは50部屋くらいあるんだろ、好きなとこ勝手に選べはいいんじゃ無いか?」
「馬鹿野郎! 部屋数は多いけど、良い部屋はそんなにねえんだよ!」
確かに綺麗で眺めが良くて広い部屋は、艦長室を想定している部屋と、VIP用の豪華な部屋が二部屋の合計三室しかない。無双鉄騎団の現在の人数は10名──普通に考えたら取り合いになるのは必然だろう。
「たくっ、じゃあ、前みたいにあみだくじで決めるか」
「ふっ、望むところだ、今回は負けねえからな」
「あみだくじってなんですの?」
今回初参加のリンネカルロがそう聞く。
「地球の公正な勝負方法だ、こいつで出た順番で部屋を決めて行くぞ」
「ふ〜ん、とにかく一番を引けばいいだけですわね、簡単そうですわ」
簡単とか難しいとか無いと思うが、何を勘違いしてるのかリンネカルロは勝つ気満々である。
俺が紙に線を引き、あみだくじの升目を書いて行く。ゴール部分は紙を半分に折って隠し、一人一人順番に線を選んで升目に線を追加していく。
「よし、全員選んだな」
「早く開くといいですわ」
「こう言うのは日頃の行いで結果が決まるものだからね、それを考えると自ずと誰が一番を引くか予想できそうね」
アリュナの何気ない言葉にリンネカルロが反応する。
「あら、でしたら私しかいませんわね、日頃から誠実、堅実、謙虚を心に持って生活してますもの」
どの口が言うんだろうとツッコミを入れたかったが、揉める原因になりそうなのでここは放置する事にした。
そして結果は──
1 ロルゴ
2 ファルマ
3 エミナ
4 ライザ
5 ナナミ
6 アリュナ
7 勇太
8 アーサー
9 ジャン
10 リンネカルロ
「だぁ〜〜! なぜだ! なぜ俺は一番を取れない!」
ジャンが悲痛な叫び声をあげる。
「何かの間違いですわ、私が最後なんて……」
「まあ、思うところあるかもしれないけど、これが結果! 受け入れて部屋を選んでいこう」
悪い結果だったメンバーがブツブツと文句を言い出したので、面倒くさくなる前に強引に話を進めた。
「ロルゴ、どこの部屋を選ぶんだ」
「おで、どこでもいい……」
「それじゃ、ここなんかどうだ、日当たりは良さそうだぞ」
ジャンがロルゴに勧めたのは日当たりだけがいい、狭い一般船員用の部屋であった。
「悪い奴だな、ジャン。ロルゴ、ジャンの言う事聞いたらダメだぞ、一番を引いたんだから一番いい部屋を選んでいいんだから」
「おで……一番良い部屋わからない……」
「そっか、じゃあ、無難に艦長室にしたらどうだ」
「勇太が言うなら、おで……そこにする」
「チッ、余計な事を……」
ジャンは悔しがってるけど、もしロルゴがそこを選ばなくても九番を引いたジャンに一ミリもチャンスは無いと思うけどな……
「ファルマ、どうするんだ」
「う〜ん、じゃあ、私はこの右奥にある大きな部屋にする」
「だぁ! そこも取られた!」
いや、だからジャンにチャンスは無いって──
もちろん三番を引いたエミナは残りのVIPルームを選択して、大当たりの部屋は全て決まった。
ライザは格納庫に近い部屋が良いと、一番下部にある地味な部屋を選ぶ──本当に仕事熱心な子だな。ナナミは高い所が良いと言って、一番上部にある部屋を選択して、アリュナはゆっくり寝たいからとの理由で、みんなが集まるブリッジやミーティングルームなどの近くを避け、奥の部屋を選ぶ。
さて、俺の番だ。正直どこでも良いってのが本音で逆に悩む。
「勇太、ナナミの隣空いてるよ!」
「あら、私の隣も空いてるわよ、勇太、遠慮しないで選びなよ」
ナナミとアリュナがそう勧めてくるが、どっちの隣を選んでも角が立ちそうなので、ここは無難に隣に誰もいない部屋を選んだ。
「さて、私の番ですね、私はそうですね、やはりここか……いや、そこよりこっちが……いやいや、やっぱりこっちの部屋が……」
と、嫌に長々と悩むので、最後はアーサーはここに決定とリンネカルロに強引に決められた。
「俺の番か、本当にろくな場所残ってねえな──しかたねえ、ブリッジの近くにするか」
ジャンが嫌々選ぶと、最後のリンネカルロは悩む事なくこう言った。
「私はここにしますわ、もう、どこでも一緒でしょう」
投げやり気味に選んだのは俺の隣の部屋だった。
「リンネカルロ、そこ、勇太の隣だよ、どこでも良いなら周りに誰もいない部屋の方が良いんじゃ無い?」
ナナミにそう指摘されたリンネカルロは、ちょっと挙動不審にこう答えた。
「あら、そうでしたっけ? まあ、気が付きませんでしたわ。しかし、一度選んだ場所を変える気はありませんので、仕方なくここにする事にしますわ」
そう言いながら外の景色を見て、なぜか俺から顔を逸らせた。
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