第114話 フェリの引越し
リンネカルロやアーサーの加入で賑やかになってきた無双鉄騎団、メルタリア王国を去るとき、どうせならもう少し人が増えてもいいだろうと、クラスメイトの御影守も無双鉄騎団に誘ってみたのだが、その返事は──ちょっと勇太くんたちのレベルについて行く自信が無い、とはっきり断られた。俺とリンネカルロとの戦いがトラウマになってるのかな……
姉のリンネカルロも仲間になった為か、メルタリア王国を去るとき、ユーディンは盛大に送り出してくれた。財政難の折に無駄なお金使うなよと思ったが、まあ、送り出したいと言うその気持ちは嬉しかった。
「ライザ、どうだ、ヴィクトゥルフのコアメンテナンスってできそうか?」
商業都市バラヌカまでの道中、移動の時間を使って、コアの劣化で不具合が生じているヴィクトゥルフをライザに見てもらっていた。
「さすがの私でもコアの不具合には対処できないよ。そもそもコアをいじる事自体、今の技術者には無理だから」
「そうか……フェリ、ごめん、直せそうにないや」
俺がそう言うと、ヴィクトゥルフに搭載されているAI フェリ・ルーディアが答えてくれる。
「コア技術者不在でコアの修復不能な状況、理解しました。それでは、これ以上の摩耗を防止する為に、コア技術者の帰還までヴィクトゥルフを冬眠モードへと移行させます」
その声を聞いたライザが驚いてヴィクトゥルフの中から飛び出してくる。
「なっ、何今の!?」
「えっ、何って、ヴィクトゥルフのサポートAIのフェリだけど」
「AIって何? フェリって誰? どうして魔導機が喋るのよ」
AIと聞いて現代の地球人ならパッとイメージできるが、どうやらこちらでは馴染みのない言葉らしい。
「え〜と、どう説明したらいいかな、人工的に作られた人間と言うか……」
そう言うとライザは納得したようだ。
「なるほど、ホムンクルスみたいなものか」
ホムンクルスが何かわからないけど、深くは聞かなかった。
「えっと、フェリ、あなたはコアの知識は無いの? 教えてくれれば私が直してあげれるかもしれないけど」
「残念ですが知識だけではコアのメンテナンスを行う事は不可能です」
「あら、そうなの……それじゃどうしよか、ヴィクトゥルフが冬眠したらあなたはどうなるの?」
「私はヴィクトゥルフのルーディアコアとは直接的な繋がりはありませんので、単独での活動が可能です」
「と言う事はあなたを別の魔導機に移動する事は可能?」
「はい、別の魔導機でのサポートは可能です」
「どうする、勇太、ヴィクトゥルフは使えなくなるみたいだし、面白そうだからフェリをアルレオに移植してみる?」
「そんな事できるのか!? そうだな、フェリは何かと便利だから、それが可能ならそうしてくれるか」
「よし、フェリ、あなたの本体の場所と、移動方法を教えてくれる?」
「わかりました、説明いたします」
それからフェリとライザはブツブツと何かを言い合いながら作業を進めた。
「できたよ、勇太、ほら、試しにアルレオに乗ってみて」
ライザに言われるままに、俺はアルレオに搭乗した。
「フェリ、聞こえるか?」
「はい、マスター、聞こえております」
「どう、アルレオは、ヴィクトゥルフと比べて」
「はい、残念ですが、ヴィクトゥルフと比べると性能は八割ほど劣ります。しかし、コアに制御リミッターが付けられているみたいですので、これを解除すれば少しは性能の向上が期待できます」
「制御リミッター、そんなの付いてたんだ、フェリでそれを解除できるか?」
「はい、可能です」
「それじゃ、解除してくれ」
「了解しました。ルーディアコアにアクセス、制御リミッターをオフにします」
ブオンと鈍く唸る音が鳴り響く。
「制御リミッター解除しました。解除前より、50%の性能向上がみられます」
「1.5倍も強くなったのか、凄いな」
「それでもヴィクトゥルフの三割ほどの性能になります」
「まあ、あれは伝説の機体らしいからな、別モンだろ」
そんなフェリとの会話中、艦内通信でどこかと話をしていたライザが通信を切ってこう大声で伝える。
「ちょっと、勇太、ジャンが二人ともブリッジに来いって言ってるよ」
「わかった、直ぐに降りる」
俺だけじゃなくライザも一緒にって、どんな用件だろ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます