第112話 報酬プラス
メルタリア王国を旅立つ前に、リンネカルロにお別れをしたいと彼女を訪ねようとしたのだけど、向こうの方からやってきた。それも満面の笑みで──
「無双鉄騎団の予想以上の活躍に対して、ボーナスを用意しましたわ」
「よくまあ、この金の無い時に、ボーナスなんて用意できたな」
「お金が無いのは認めます、ですからボーナスは金銭ではございませんわ」
「じゃあなんだよ」
「人材ですわよ、それも最高のライダーですわ」
「……ちなみにその最高のライダーって誰のことだ?」
すごく嫌な予感がしたのでそう聞き返した。
「もう、最高のライダーなんて、そんじょそこらに転がってるわけないでしょう、私に決まっているじゃないですの」
「ええっ! リンネカルロが無双鉄騎団に入るってことか!?」
「そうです、入ってあげますわ。これでもう無双鉄騎団はその名の通り無敵の傭兵団になりますわよ」
「いやいや、今回の騒動でこの国の戦力ってかなり失ってるんだろ、リンネカルロがいなくなったら困るんじゃないのか」
「失ったのは魔導機だけで人的被害は想像以上に少ないのですわ、魔導機も早急に修理を進め、新規に購入する予定ですからすぐに戦力は回復します。それに、メルタリア王国と無双鉄騎団は防衛契約を結びますから有事の際には駆けつける予定ですから気にしなくても良いですわ」
「防衛契約ってなんだよ、初耳なんだけど」
「それはそうですわよ、今初めて話しましたもの」
「初めてって……ジャン、黙ってないで何か言えよ」
珍しくジャンがそれを黙って聞いていたので、意見を言うようにそう話を振った。
「いやよ、ちょっと考えてたんだよ、リンネカルロが加入するメリットと、加入した事によるデメリット。クアドラプルハイランダーの市場価値なんて想像できないくらい高額だからな、それを考えたらギリ……いや、少しだけ加入するメリットの方が大きいかもしれん」
「その想像できなくらいの高額な価値のメリットと同等のデメリットが何か知りたいですわ」
「まあ、それは置いといて、防衛契約ってくらいだから定期的な報酬は期待していいんだな」
「ふんっ、もちろんですわ、年間1億、何もしなくても払うとユーディンが約束してくれています」
「ほほう、じゃあ、防衛契約は断る理由は無いわ。リンネカルロの加入は、勇太、お前が判断しろ」
「ええっ! 俺が? う〜ん、そうだな、確かにリンネカルロが加入すると心強いけど……」
やっぱりリンネカルロって、なんか面倒臭そうなんだよな……だけど、やはり強力な仲間が増えるのはいいことだし──
「わかった、リンネカルロ、一緒に無双鉄騎団で頑張ろう」
そう俺が言うと、気丈に振る舞っているけど、どこか少し不安そうにしていたリンネカルロの表情が明るく変わった。
「ふんっ、当然です。悩む理由がわかりませんわ、あと、オマケでアーサーも私に付いてくるって言ってますけど、それはどっちでも良いですわ」
「アーサーも無双鉄騎団に入るのか?」
「ハイランダーですし、少しは便利ですわよ」
まあ、リンネカルロよりは正直使いやすいんだよな。
「わかった、アーサーも面倒みるよ、ユーディンから貰ったライドキャリアの格納庫は広いから余裕あるし」
こうしてリンネカルロとアーサーが無双鉄騎団に正式加入した。かなりの戦力アップは間違いなく、大きな仕事の依頼も受けることができると思う。
しかし、無双鉄騎団の魔導機が増える事によって、仲間の一人から猛抗議が起こった。
「いい加減にして! もう限界なんだって! 早急にメカニックを増やしてくれないとメンテナンスも修理もしないからね!」
メカニックのライザの悲痛な叫びは、流石のジャンにも伝わった。
「わかったって、ライザ。次の目的地は商業都市バラヌカだ、そこでメカニックとライドキャリアの搭乗員の募集をするつもりだから安心しろ」
ライドキャリアの搭乗員は、戦艦タイプの大型艦になったことでジャン一人では動かすのが不可能になったので募集する事になった。
「さ……三人はメカニックが必要だからね」
「わかったって、三人募集するけど、集まるかどうかはわからんぞ」
「優秀なメカニックだからね!」
「それは自分で面接して見極めろよ、俺には優秀なメカニックを見分ける能力はないぞ」
今まで余程辛かったのか、ライザはどこか嬉しそうだ。俺もライザが可哀想だと思ってたので、メカニックが増えるのは好ましく思う。
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