第67話 メルタリア王国へ

リンネカルロの母国である、メルタリア王国に向かうことになった俺たちは、ライドキャリアで移動しようと乗り込もうとした。


「ちょっと、お待ちなさい、あなた方のライドキャリアはエドラタイプですよね」


よくわからないリンネカルロの質問に、ライドキャリアの元の持ち主であるアリュナが答える。


「そうだよ、エドラタイプの二期型だけど」

「そう、でしたら私のライドキャリアと連結可能ですわね」

「確かに可能かもしれないけど、別々に移動してもいいんじゃないの」


「こちらは二人しかいませんので操縦するのも大変ですのよ、悪いですけど連結させてもらいますわ」


どうやらライドキャリアは同タイプだと連結して移動することが可能のようだ、リンネカルロは操縦するのが面倒臭いようで、こちら連結して楽に移動しようとしているらしい。


「ついでに魔導機の修理もお願いしてもよろしいかしら」


「だって、ライザできる?」

「うっ……魔導機四体の修理を一人でしろと?」

「だよね、悪いけど、うちのメカニックは一人しかいないから無理だね」


「あら、それは残念、修理代は別途お支払いしますのに……」


「おい、ライザ……頑張ってみようか」

修理代が別料金だと聞いたジャンがブラックなことを言い出した。


「たくっ……ボーナス貰うよ。それに魔導機が増えてきたし、この先一人じゃ辛いからメカニックの補充要員も考えてよ」


「確かにそうだな、こんな状況じゃライザが可哀想だから、他のメカニックも探さないとね」


前から一人で大変そうなのを見ていたので俺がそう意見を言うと、ライザはマジマジと俺を見てこう言った。


「あんたがアリュナ様に近づかなくなるのが一番嬉しいんだけどね!」


ちょっと顔を赤くしてそう叫んできたのだけど……たくっ、せっかく気を使ったのに何なんだよ……


そして問答無用でライドキャリアを連結させたリンネカルロは、俺たちのライドキャリアで我が家のように寛ぎ始めた。


「どうして、こっちでゴロゴロするんだよ、バカ姫!」

容赦ないジャンは、お姫様相手にもストレートに文句を言う。


「あっちは何もないからつまらないのですわ、それよりバカ姫とは何ですかとんがり頭!」


「そうだぞ下民が! それに麗しのリンネカルロ様に寛いでもらってるだけありがたいと思え! 私なんてリンネカルロ様の寛ぐ姿で飯が三杯は食べれるぞ!」


「ちょっとアーサー、変態的だからそう言う発言はおやめなさい」

マジ顔でリンネカルロに注意されてアーサーはちょっと落ち込んでいる。


「もしかしてだが、飯もたかる気じゃねえだろな」


「あら、私はそんな浅ましくありませんわよ、まあ、どうしてもと言うなら食事にお呼ばれしても良いですけどね」


「チッ……依頼主だから飯くらい食わしてやるけどな、少しくらい感謝とかしてもバチは当たらねえからな」

なんだかんだ言ってもジャンは優しいんだよな、ちゃんとご飯を食べさせるつもりらしい。


「感謝くらい、いくらでもしてあげますわ、言葉にはしませんけど」

「意味わかんねえよ!」



想像だけど、ギャンブルで資金を使い果たして、まともな食事をしていなかったのかリンネカルロの食べっぷりは本当に良い。ガツガツと美味しそうにジャンの作った料理を食べる。


「お姉ちゃん、これもあげるよ」

「あら、いいですの、でしたら遠慮なくいただきますわ」


ナナミが気を使ったのか自分の分をリンネカルロに分けてあげている。


「それより、リンネカルロ、少しくらい仕事の内容を話してくれないかな、前の仕事があまりいい依頼じゃなかったから気になるんだよ」

食事の会話の中で自然と俺はそう聞いた。


「……そうですわね、いいでしょう、でも、話を聞いたらやっぱり契約破棄とかなしですわよ」


「そんな心配してたのかよ、俺たちは一回結んだ契約は守るから安心しろ」

ジャンが間髪入れずにそう答える。


「それでは話しますわ、恥ずかしい話、今のメルタリア王国は情勢が不安定な状態にあります」


「何だよ、内乱でも起こってるのか」

「いえ、王が危篤でもう長くないのですわ」

「王ってリンネカルロのお父さんだよね」

「ええ……父はもう長くないですわ……それで跡目争いで混乱していますの……」


リンネカルロが凄く悲しい表情をした……やっぱりお父さんがそんな状態なのは辛いんだろな。


「ちょっと待ちな、もしかして自分の権力争いの戦争に私たちを雇ったんじゃないでしょうね」

アリュナが驚いたようにそう聞き返す。


「違いますわ、私は第三王女──男児優位のメルタニアでの王位継承権は九番目ですわよ、そんな地位なのに王位なんて狙ってませんわよ」


「それじゃどうして……」


「このままだと第一王子のムスヒムが王になってしまいますの……」

「第一王子が王になったらダメなのか?」


「兄のことを悪くいうのもあれですが……アレはクズですわ! いえ、人の心を持たぬ外道ですわ! あんなのが王になったら歴史あるメルタニアは滅んでしまいます」


リンネカルロも大概だと思うけど、そんな彼女がこれほど強く非難するムスヒムって……

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