第64話 全力モード

シールドを構えてリンネカルロの出方を待った……オーディンが持つ杖がこちらに向けられる、俺はシールドを持つ手に力を入れて攻撃に備えた。ナナミとの戦闘の時に思ったのだが、オーディンの攻撃は一度使うと次に放つまでに少しのタイムラグあるように感じた、最初の攻撃を防いだら接近してこちらのペースに持ち込もう……


ズゴォーン! ナナミとの戦闘で聞いた、謎の放出音が鳴り響く──瞬間、シールドを持つ手に強烈な衝撃が走る。


「くっ!」


かなりの衝撃だったが、なんとか防いだようだ……俺は次の一撃が来る前に接近しようと走り出そうとした。


「あらら、連続攻撃ができないとでも思ったのかしら、残念ですわね、思惑が外れて」


リンネカルロの言葉に反応して、俺はとっさにもう一度シールドを構え直した。瞬間、さっきとは比べ物にならないような強烈な衝撃がアルレオを襲う。


「ぐはっ!」


信じられないことに構えていたシールドが木っ端微塵に吹き飛んだ──オーディンを見ると、手に持つ杖はまだこちらの方向を向いている。やばいと感じ、とっさに右方向に転がるように前転して回避行動をとった。


ドゴッ! バリバリバリと雷が落ちたような音が響いて、俺のいた場所の地面が抉れる。かなり威力のある攻撃に、直撃を受けたら丈夫なアルレオでもどうなるか予想ができない。


攻撃を防ぐシールドもないので、もう見て攻撃を避けるしかない……オーディンの杖の方向を見て、攻撃を予想した。


見ると、どう言うことか杖は下を向いていた……今なら接近することができそうだ……俺は今がチャンスと走り出した。


しかし、やはりと言うか当然と言うか、それは罠だったようだ、いきなり周りがバチバチと静電気のような音が鳴り響き始めると、バリバリバリと雷の落ちるような音がして、アルレオに衝撃が走る。


「ぐっ!!」


なんだよ今の……周り全体に雷が落ちたような攻撃は……


「本当に凄いですわね、テンペストを耐えるなんて……でも、広範囲を攻撃する範囲攻撃のテンペストを避けることは不可能ですわ、何発で動けなくなるか楽しみですわ」


範囲攻撃だって、そんなの反則だろ……


さっきと同じようにパチパチと周りに静電気が発生するような音が聞こえてくる……範囲攻撃というのは嘘じゃないようだ、よく見ると周り全体に小さな稲光が見える。


そしてバリバリバリと雷が落ちたような音が響いて衝撃が走った。


くっ……ダメだ……このままだとやられる……どうすればいいんだ……


「勇太! ルーディア集中を忘れてるよ!」


アリュナの声にハッとする。そうだった、最近は強敵と戦う機会もなかったので忘れてた。


「ちょっと嘘でしょう……ルーディア集中もしないでテンペストを耐えたの?」


アリュナの言葉に、リンネカルロが少なからず驚いていた。そして杖をこちらに向けてこう叫ぶ。


「今更ルーディア集中なんてさせませんわ!」


避けるのも間に合わない……そう思った俺は左手を前に出してリンネカルロの攻撃を手で受けた──バシュっと破裂するような音とバリバリバリと強い電気が放電する音が重なり、アルレオの左手が吹き飛んだ。


「勇太!」


左手を失い、絶体絶命のこの状況……だけど今の一撃で俺の中で何か変化が起こった……緊張の糸が切れたと言うか、妙なリラックス状態に突入して、その状態は俺を一気に集中モードへと導く……


「アルレオの周りに青白いオーラが……」

「勇太がルーデイア集中に入ったようだね」


エミナの言葉にアリュナが答えた。


「な……なんですのその青白いオーラは……」

リンネカルロは初めて見る光景に驚いているようだ。


俺はゆっくりとリンネカルロに近づいていく……


「くっ……妙な小細工で私を惑わそうとしても無駄ですわ!」


そう言って杖をこちらに向けて攻撃を放った……俺はそれを紙一重で避ける──次々くる攻撃を避け続けるとリンネカルロは杖を下に向けた、あれは範囲攻撃の構えだ。


「テンペストは避けることはできないでしょう!」


確かに避けるのは不可能と思ったが、避ける必要がないと感覚で感じていた。


バチバチバチと静電気の音が周りに現れる……そしてバリバリバリと雷の落ちるような音が響いた。しかし、雷撃はアルレオの青白いオーラに触れると、ジリジリと音を出して弾き返された。


「まさか! テンペストの雷撃を弾き返すなんて!」


範囲攻撃なだけあって、テンペストの攻撃力は分散されて弱い。だから今のルーディア集中状態のアルレオには通用しないようだ。


「でしたらトリプル・ライトニングで!」


そう言ってリンネカルロは杖をこちらに向けてきた……俺は魔光弾を構えた……そしてリンネカルロが雷撃を放った瞬間に、それを放った。


魔光弾の閃光は、迫りくる雷撃を蹴散らし、そのままオーディンの右肩を吹き飛ばした。


「きゃっ!」


俺はバランスを崩して動きが止まったオーディンに接近すると、剣を振りその頭部を飛ばした──


「そこまでだ、勝負あり! 勇太の勝ちだ」


ジャンがオーディンが行動不能になったのを見てそう宣言した。

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