第34話 傭兵団の最初の仕事
傭兵団として、カークス軍から最初の任務が言い渡された。
「ルバ要塞を奪還してくれって言ってきた」
俺がそうみんなに連絡すると、ジャンが少し驚く。
「要塞の奪還だって! おいおい……いきなりヘビーな要請だな……」
「この作戦は私たち無双鉄騎団だけの任務じゃなくて、契約している全傭兵団との共闘作戦になるみたいだね」
アリュナが捕捉してくれる。
「要塞の戦力はどうなんだ」
「魔導機100機ほどらしいけど、完全には把握してないようよ」
「敵の戦力はちゃんとわかってないけどとりあえず行ってこいってか、なかなかの雑な扱いだな」
「カークスの正規軍の魔導機も30機ほど攻略に参加するみたいだから、完全に捨て駒にする気でもないようだけど……まあ、これくらいはやって貰わないとでも思ってるんでしょ」
アリュナの言うように、捨て駒にするって言うより力を試す意味合いが大きいように思う……
ルバ要塞はカークスと戦争中のチラキア帝国との国境から10キロの地点にあるそうだ……俺たちは他の傭兵団、カークス正規軍とそこへ向かった。
「こちらの戦力はカークス正規軍30、狼猟団12、獣王傭兵団23、クラッシュバンカー14、そして無双鉄騎団4の魔導機83機と、実際の戦力にはならないけど、カークスの歩兵部隊が5000人……敵は推定、魔導機100機に要塞のバリスタ150門……ちょっと不利な戦いになりそうね」
「バリスタってなんだ?」
「バリスタは歩兵が使う兵器で、設置型のアローって想像したらいいわ」
「アローだって! それが150もあるのか!」
「まあ、ファルマのガルーダが撃つアローほどの威力はないと思うけど、魔導機にも十分ダメージを与えるから油断はできないわね」
魔導機の数でも負けてそうなのにそれにバリスタとは……
ルバ要塞の近くまで来ると、カークス軍のライドキャリアで最終的な作戦会議がおこなわれた……
「要塞の西、南、東の三方向から一斉に攻撃する」
「北からは攻撃しなくていいのか」
カークス軍の指揮官の言葉に、どこかの傭兵団の一人がそう尋ねる。
「四方向から攻撃する戦力は無いし、北は防御が硬く、バリスタの数も多い……攻撃するメリットも薄いのでここは捨てておいた方が良いだろ」
「なるほどな、それで分散する戦力の内訳は?」
「南からはカークス正規軍、東はクラッシュバンカーと狼猟団、西は獣王傭兵団と無双鉄騎団で行こう」
そうカークス軍の指揮官が言うと、獣王傭兵団の団長が異議申し立てた。
「待て……俺たちは無双鉄騎団と一緒に戦うのは拒否する」
「どうしてだ?」
「こんな胡散臭い奴らに背中を預けられるか! 仲間の情報では詐欺師集団だとの情報もあるのでな……」
「そ……そうか……では他の傭兵団で、無双鉄騎団と一緒に西を攻めてくれるところはあるか?」
しかし、その指揮官の言葉に応える傭兵団は無かった……
「ふむ……ならば仕方ない、西からの攻めは無双鉄騎団だけでお願いしよう、獣王傭兵団はカークス正規軍と一緒に南からの攻撃に参加してくれ」
「ちょっと待てよ! 俺たちだけで西を攻めろって言うのか!」
ジャンが思わず抗議する。
「そうだ、仕方なかろう、皆、お前たちと一緒に戦うのは嫌なのだから」
「それはカークス正規軍もそうだってことか?」
「私も部下の命を預かる身だ、要らぬ危険は犯さぬ」
俺たちの命はどうでもいいのかよ……そう強く言い返そうかと思った時、アリュナがこう宣言した。
「いいよ、その作戦受ける、無双鉄騎団は単独で西から要塞を攻撃する」
「いいのか、アリュナ……」
俺が思わずそう聞くと、アリュナは堂々とこう言い切った。
「いいに決まってる、私もこんな連中に背中は預けられない……だけど覚えておきな、あんたらが苦戦して困っていても、うちらは救援しないからね」
「ハハハハッ〜たったよ4機の魔導機に助けられるような戦況になったら、すでに我々は敗北してる」
豪快に笑いながら獣王傭兵団の団長はそう言い放った。
共闘作戦と言っても、他の傭兵団は味方では無いことをここで思い知らされた……
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