第23話 天賦の才/結衣
◇
右に二体……左に三体……私はエルヴァラとシンクロして、周囲の気配を探った……不意に大きな気配を後ろから感じた……最小限の動きをイメージする……体を捻るようにして後ろからの攻撃を避ける……と、同時に右手のレイピアで後ろからの襲撃者を攻撃する……その攻撃は足の関節部分を的確に狙い、その一撃でその機体を行動不能にした……
大きく跳躍する、右の二体の後方に着地すると、背中のコア駆動部分を順番に貫き、行動不能にする……そして走って残りの三体に向かった……
三体は剣で応戦しようとした、まずは正面の一体の顔面を素早く突いて破壊する……剣で攻撃してきた左の機体を掴み、もう一体へ投げつける。
ぶつけられて、あたふたしている二体に向かい、レイピアの連撃を繰り出した……5秒ほどの連続攻撃だったが、二体のボディーは穴だらけになり動かなくなる……
そこで通信石からユウトさんの声がかかった。
「結衣、そこまでだ」
一ヶ月の訓練の成果を見せる模擬戦……そこで私は誰もが納得する成果を出した……
「よくぞ一月でこれほどの力を身につけました」
軍務大臣のイーオがその成果を見てそう声をかけてくる。
「いえ、私は何も……全て教授してくれたユウトさんのおかげです」
そう答えたのだが、名を出した本人がそれを否定する。
「いや、結衣の才能だな、これほどまでに早く成長するとは僕も思ってなかったよ」
ただ持ち上げているだけだとは思うけど、彼が言うことに誰も否定する事はない、その場にいた軍部のお偉いさんたちも手放しで称賛する……
「それでは、次は実戦経験の機会を作らせてもらいますか」
「ですな、ジムリア戦線にでも参加してもらいますかな」
どんどん話は進んで、私の初戦が決まりそうであった……
「それよりイーオさん、頼んでいた例の件はどうなりましたか」
それは勇太くんの救出の話だった……期待して聞いたのだけど、結果は私をがっかりさせるものだった……
「対象の者ですが、買い取った奴隷商人は特定して、買い戻す為に交渉したのですが、どうやら逃亡されたようです……それを隠して我々と交渉した奴隷商人には死という制裁で償わせました」
「そんな……」
「しかし、ご安心を、我が国の諜報機関が最重要案件として動いております、そう遠くない日に、朗報をお伝えできると思います」
「お願いします……彼が心配で……」
「はい、全力をもちまして」
その日の夜……軍が主催でパーティーが行われた……それは私の成長を祝うもので、エリシア帝国の上位ライダーが勢揃いしていた。
「君が結衣か、素晴らしい才能を持ってるとユウトから聞いている」
「結衣様、こちらはクアドラブルハイランダーのエメシス様です」
イーオさんがそう紹介してくれる。
「結衣です……よろしくお願いします……」
「そう硬くならずともよい、今日は君が主役なんだからな、そうだ、最高の酒を用意させよう、ブルトゥーナの60年物だ、一緒に飲もうではないか」
「あの……私、お酒は……」
「そうか……ならば果実酒でも持ってこさせよう」
エメシスさんとそんなやりとりをしてると、赤髪の綺麗な女性が近づいてきた。
「エメシス、今日の主役を独り占めとはよくないですわね」
「結衣様、クアドラブルハイランダーのロゼッタ様です」
イーオが素早く女性を紹介する……
「よろしくね、結衣」
「よろしくお願いします……」
「ロゼッタ、君はルガナンとの戦いに出てたんじゃないのか」
エメシスがロゼッタにそう話しかける。
「あら、聞いてないの? ルガナンは三日前に陥落したわよ」
「それはそれは……仕事の早い……」
「すでにこちらが優勢だったから、私が行くこともなかったのよ」
「なるほど、アムノ皇子の点数稼ぎかな」
「それは否定しないわ、ルガナン陥落の功績でアムノ皇子の後継者としての地位は上昇したと思う」
二人のクアドラブルハイランダーが私のわからない会話をしていると、師であるユウトがやってきて二人に注意した。
「主役の彼女を置いてけぼりにして、大人の会話とはあまり褒められた行為ではないな」
「おっと、確かに……結衣、失礼した」
「そうね、今はこんな話をするべきじゃなかったわ」
素直に謝罪してくれるこの二人が、悪い人間ではないように思えた……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます