クラス最安値で売られた俺は、実は最強パラメーター

RYOMA

第1話 売られる二年三組

修学旅行──俺はこの日を待っていた……一年からずっと好きだった白雪結衣に告白しようと思っているからだ。


「ちょっと、なにガチガチに固まってるのよ……もしかして今から緊張してんじゃないよね」


純粋な男心もわからずそう言うのは俺の幼馴染の渚だ……デリカシーのない奴だ、ナーバスになっている幼馴染みにもっと気を使えよ。


「き……緊張してねえよ!」

「嘘言いなさい、勇太がそんな顔してる時は緊張で何も考えられない状態の時でしょ、あんた、告白するのは三日目の夜でしょ? 初日でそんな状態になってどうするのよ」


そう、告白の予定は三泊四日の三日目の夜、今は修学旅行初日、まだ三日もあるのだ……

「わかってるよ、たく……幼馴染が一世一代の大勝負するんだからもっと気を使えよな」

「無償で、告白に協力してあげる心優しい幼馴染に向かってなんてこと言うのよ……そんなこと言うなら協力してあげないわよ」

「す……すんませんでした! もう生意気いいませんので協力してください」

「わかればよろしい。でも……本当に告白するの? やめるのなら今よ、相手はクラスどころか全校生徒、いや私たちの街でも屈指の美少女、白雪結衣なのよ、あんたとなんて不釣り合いすぎて……」

「ふっ……たとえ攻める場所が難攻不落であろうとも、俺は諦めなどしない!」

「難攻不落くらいならいいけどね……」


その時だった……俺たちが乗っているバスが異常に揺れた。

「なんだ、地震か!」


地震にしては様子がおかしい……外の風景が妙なものに変わっていたのだ……なんともカラフルな色の模様で、モヤモヤと大量の煙が立ち込めているように渦巻いている。


そして、さらに大きな衝撃が起こると、バスはドスンとどこかへ落下したような感覚になった。


「なんだよ、何が起こった!」

「いや、崖から落ちたんじゃないの」

「落ち着いて、みんな……」

「南先生、どうなんたんですか」


担任の南先生が必死で俺たちを落ち着かせようとするが、一度火のついた騒がしさはなかなか静まらない。


──……ガチャ! バスのドアが勢いよく開けられる。そして中世の兵士のような、よくわからない格好の人が突入してきた。


「全員、ここから出ろ!」


「なんだよお前、どうして出なきゃいけないんだよ」

クラスで一番のイケイケな舟塩が、その兵士に食ってかかる……すると兵士が、持っていた槍で、舟塩の足を殴った。

「いて!」


「次は突き刺すぞ」


そう真顔で言われると、さすがの舟塩も黙り込む。


「とりあえず、みなさん、言われるように外に出ましょう」

南先生がそう指示したので、俺たちはバスから外にでた。外に出ると、俺は一番最初に白雪結衣の姿を確認した……よかった……無事のようだ。


「勇太……怖いよ……」

渚が珍しく弱音を吐いてくる。

「大丈夫、危害を与える気ならとっくにしてると思うぞ」

根拠はないが安心させる為にそう言った。


バスの外は、昔のローマの街並みのような、原始的な作りの建造物の中だった……その光景を見て、オタクでゲーム好きの田畑波次がこう叫んだ。


「異世界転移だ! ここは絶対異世界だよ! すげーまさか本当にこんな世界があるなんて……」


異世界か……確かにそう考えないとおかしすぎる……


全員が外に出ると、バスは変な機械にどこかへ運ばれる……原始的な文明のように見えるけど、所々で機械っぽいものも見かけて、文明レベルがよくわからないな。


「よし、全員、こっちへこい」

数十人の兵士に囲まれて、俺たちはどこかへ移動させられた……まあ、少しは予想していたが、そこは牢獄であった。


「全員入れ!」

「なんだよ……どうしてこんなとこ入れられないといけないんだよ」

「いいから入れ! 次、余計なことを言ったら刺し殺すからな」


そう脅されたら誰も文句は言えない……俺たちは大きな牢獄へとまとめて入れられた。


しばらくすると、兵士とは違う服の、少し偉そうな男が牢屋の前にきた……そいつはこんな話を始めた。


「いや〜乱暴な真似して悪かったね。私はこの召喚所の所長で、バーモルと言うものだ」


「召喚所ってことはやっぱりここは異世界か!」

波次が嬉しそうにそう言う。


「そうだね、君たち地球の人間からしたら異世界というものになるんだろうね」


「地球って……貴方たちはそれを知っているんですか」


南先生がそう聞いてくれた。


「もちろん、君たちが地球人だとわかって召喚しているからね」

「それはどうしてですか」


「うむ、それではなぜ君たちがここへ召喚されたか説明しよう……この世界では魔導機と呼ばれる旧魔導文明の道具が、建築、土木、運送など、あらゆる場面で使われてるのだが、その魔導機は特殊なエネルギーとリンクして動かさなければいけなくてね……この世界、ファルヴァの住人は、そのエネルギーが強い者が少なくて、絶対的に魔導機の操縦者が足りないのだよ」


「それはどう言う意味ですか……」

「あなた方地球人は、その多くがその特殊なエネルギー……我々はルーディアと呼んでいるのだが、その値が高いのだ……だから膨大な予算を使って、こうして召喚儀式で定期的に地球から地球人を召喚してるのだよ」


「そんな勝手な……私たちの意思は無視ですか!」

「まあ、悪いとは思ってるが、この世界での魔導機の操縦者は地位が高い、悪い生活ではないと思うよ」


どうやら俺たちに拒否権はないようだ……渚が俺の服を持って不安そうな顔をしている。


「とにかく、明日には君たちは売りに出される。ルーディア値が高ければ高いほど良い場所に買われるだろう、自分のルーディア値が高いことを祈っていてくれ」


そう言い残して召喚所の所長は去っていった……



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