第2話 転生
「ん、ここは?」
目を開けるとそこは見知らぬ天井だった。まだ少しぼんやりしているものの何があったかは覚えている。女神さまの言葉を確かめるようにそっと自分の姿を確認してみた。頭に手を伸ばせばそこにあるのは狐耳。お尻の方に手を伸ばせばそこにはもふもふの尻尾。ぐーぱーしてみればそこには未発達のとても小さな手。肌はぷにぷにとしていて自分が子供なのだと同時に本当に転生したのだと深く納得してしまった。
(あれ?)
ここで俺は少し違和感を持った。赤ん坊とはいえ高い声。いやそこまでは特に問題はない。声が高いだけなのかもしれないから。問題はそう
「うぎゃあああああああああ。」
そこには男の象徴ともいえる象さんなどなく俺が女の子なのだと確信させられた。
◇◇◇
「ん?」
どうやらさきほど泣き叫んでしまったので寝てしまっていたようだ。あの程度で意識を失うあたりよほどショックが大きかったのかそれとも子供だから体力がないのかできれば前者であってほしい。
「あら?起きたのねー。」
母親らしき声がした。しかもなんだが聞き覚えのある声がした。そっと目を開けて見れば
「何でここにいるんだ?」
「あら?私はあなたの母親よ?」
腰まで伸びたさらっさらな空色の髪に透き通るような空色の瞳。そこに狐耳と尻尾の生えたが確かに例の白い空間であった女神さまがいた。
「え?いやそれはいいんだ。聞きたいことがある。」
「はいはい。ちょっと待ってねー。」
女神様は手荷物を机に置き、簡単に俺を抱えた。赤ん坊の俺にはとても抵抗のできるものではなかった。むしろ抱え心地がよすぎてこのまま意識ごと・・・
「はっ。そうじゃない。なんで女の子なの?俺男だよ?」
「うん?だって子供なら娘のほうが欲しいもの。それに性別は指定されていないからね。」
「成人までの安全な環境は?」
「私がいれば問題ないことない?」
「・・・」
女神さまの何当たり前のこと聞いてんの?と言わんばかりの態度に思わず呆然としてしまった。確かに女神様の近くにいれば最も安全だろう。それに男なんだから男で生まれ変わるに決まっていると思っていた。性別なんか特に指定してないし、女で生まれたのも文句は言えない。まあ、今更性別なんかで文句は言うまい、それよりも問題がある。特に心が読まれること。生活している中で心なんか読まれたらたまったもんじゃない。
「あぁ。でも下界するにあたって能力は落ちてるから心を読んだりとかはできないわよ。」
「ん?!今の声に出ていたのか?」
「いや、出てないけど顔にそう書いているわよ。後、女の子がそんな言葉づかいをしちゃいけませーん。これからは私がしっかりと女の子の教育をしていくから任せなさい。」
「・・・」
どや顔でサムズアップを決めてきた女神さまにあきれて声が出なかった。俺って思ってること顔に出ているの?知らなかったんだけど。
「だからまぁ、今は休みなさい。あんたの母親は私なんだから。」
「うん。」
(あぁ、なつかしいな。)
色々とはぐらかされた気もするが女神さまのそのどこか優しさを感じるような微笑みに俺は力を抜いた。過去のことを思い出しながらもそのあまりにも心地の良い(深い意味はない)抱き加減に意識を手放した。
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