第90話 イマミアンドの隆盛
オレは帰り支度をしているオークのパーティに訊いてみた。
「一つ聞きたいことがある」
「なんでしょうか?」
「イマミアンドというのは何だ?」
オークのリーダーはビックリした顔をした。後ろの数合わせのオークたちさえ、口をあんぐりと開けていたり、
「あなたたちは一体どこからいらしたのですか? 北の大陸で最も繁栄し、歴史上最も優美な都市とも評されている街ではありませんか」
オレは生まれ故郷の城下町とその周辺しか知らないので、恐ろしいほど地理に
ここまでオークに馬鹿にされても、何も言い返すことができなかった。
仕方なくオレは後ろを振り返った。
「その名前は聞いたことがあるけど、詳しいことは分からない」
ゲネオスが言った。
パマーダは、
「私も行ったことはない。確かに豊かな街だとは聞いたことがあるけど。だけど周辺のモンスターは強いし、レベルの低いパーティでは近付くことも難しいわ」
「イマミアンドは今もヴラカスが支配しているのか?」
マスキロがオークに問うた。
オークは首をかしげた。
「その名前は分かりません。イマミアンドはメガロス様が統治されています」
「メガロス……」
マスキロはしばらく考え込む風であったが、
「そのメガロスというのは人ではないな? つまり人族以外の者だろう?」
とあらためて問うた。
オークのリーダーはその質問を聞いて動揺した。その仲間の中にはぶるぶると震えているものもいる。
「……質問の意味がよくわかりません。メガロス様はただメガロス様です」
マスキロはそれ以上は問わなかった。
「そうか」
そして独り言を言うように、
「ヴラカスめ。おそらく改名したのだな。メガロス? グレーター・デーモンが名前を気にするとはな」
とつぶやいた。
オレとゲネオス、パマーダはハッとして視線をマスキロに送った。
「グレーター・デーモン!?」
たしかプエルトの街で倒したのがレッサー・デーモンだったはず。
彼らはただでさえ身体も大きく力があるのに、特殊な能力を使えるので戦闘でもかなり苦しめられた。グレーター・デーモンというのはその親玉か? デーモンの親玉が支配する街が北の大陸のどこかにある?
マスキロの最後のつぶやきを聞くと、オークのリーダーはもうオレたちと目を合わせようとしなかった。
そそくさと荷物をまとめると、逃げるようにその場を立ち去ろうとした。
「私たちは何も分かりません。帰ります。お届けの品、本当に宜しくお願いしますよ」
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