第71話 壊死
「アクリス、もう放してよいぞ!」
そう言うと
「アクリスよ! その武器を拾え!」
大蠍はオレへの攻撃を続けながら、アクリスに命令した。
アクリスは砂に落ちたミョルニル奪い取ろうとした。
しかしミョルニルのところに行ってしばらく経っても、アクリスはその場に留まって動かない。
「早くしろ!」
「ダメ! 重くて! 持ち上がらない!」
アクリスは地面にしゃがみ込み、両手でミョルニルの柄を握って持ち上げようとしていたが、ミョルニルは初めに落ちたところからごく僅かも動いていなかった。
「何をしている!」
アクリスは力を込めて踏ん張り、必死でミョルニルを持ち上げようとした。しかし次の瞬間、急に支えがなくなったように後ろに倒れてしまった
「ギャアアアァァァ!!」
アクリスは蠍の狩り場全体に響き渡るような悲鳴を上げた。
アクリスは手のひらを自分の顔の前に掲げていた。
その手には指がなかった。
ミョルニルを見ると、その周りには黒く炭化したアクリスの指が散らばっている。
ミョルニルは鉄を打つときのようなオレンジ色に輝いており、その周りからはシューシューと湯気が立っていた。
アクリスの指を焼き切ったとき、ミョルニルに付いた血液や脂が蒸発したものと思われた。
ゲネオスはアクリスの方に向かって走っていた。
ミョルニルを回収しようとしたのだ。
「ゲネオス! ミョルニルに触れるでない!」
マスキロが叫んだ。
ゲネオスはその声を聞いて踏みとどまった。そして赤く輝くミョルニルと、その周りに散らばる黒い物体に気付いて困惑の表情を浮かべた。
「こ、これは。一体何だ……」
大蠍は戦況の変化に気付いた。
「何が起こったのだ! まあよい!」
大蠍はアクリスに構わずオレへの攻撃を続けた。
オレは盾で必死に防御しながら、利き手でシミターを抜こうとした。しかしまともに力が入らない。
なんとか
「ふふふ、毒が回ってきたようだな。しかしお前はアクリスのようにはせんぞ。この場で死んでもらおう」
大蠍は盾に向かって強いプレッシャーを掛けながら、尾を高く持ち上げて毒針をこちらに向けた。
大蠍の図体は大きいが、尾の動きはバネ仕掛けのように単純に、一瞬で行われる。
次に蠍の尾が前に向かって反り返ったとき、毒針はオレの身体を
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