第59話 息子の仇討ち

「何だあれは……」

大きな二つの目と長い触角しょっかくの後ろに細長い胴体が続いている。

体長は10メートル近くありそうだ。

それが半透明の羽を広げ、不規則に揺れ動きながらも確実にオレ達の方へ飛んできた。

全体で20匹程度はいるように思われた。

「数が多すぎる。ここは逃げ場もない」

オレ達はその場を動くこともできず、ただモンスターの近接を待った。

羽虫の編隊の中の一匹は特に先行して飛んでおり、既に高度を落とし始めていた。

この個体だけ目が真っ赤になっている。

オレは子どもの頃の記憶をたどっていた。家の周りや森の中で遊んだこと。近くに住む大人や年上の友達が教えてくれたこと。そして一つの結論に達した。

「分かった、、、あれはアリジゴクの親だ」


先行する羽虫は地面すれすれを飛行し、真っ直ぐオレ達の方向に向かっていた。

オレとゲネオスは盾を構え、パマーダやマスキロをかばった。

羽虫はやはり上下に揺れ動きながらも、接触する直前にオレの向かって方向を変えた。

羽虫はそのまま頭部から突っ込んできた。攻撃は盾で受けたが数メートルもはじき飛ばされた。周りが砂地なので、幸か不幸か地面から受けるダメージはほとんどなかったが。

しかし後ろにいたパマーダも巻き込まれてしまい、砂の上にうずくまっている。

「オレ達だってアンタの子どもに食われかけたんだぜ」

オレはなんとか体勢を立て直し、通過していった羽虫を追った。

羽虫は近くの砂地に着地しており、身体からだの方向を入れ替えると、そのまま地面の上をオレ達に向かって走ってきた。


オレはミョルニルを構え、羽虫の攻撃の瞬間に返しの打撃が与えられるよう狙いを付けた。

再び羽虫による頭突き攻撃があった。

オレは盾で受け流し、頭部にミョルニルを打ち下ろした。

ゲネオスもそのタイミングで一太刀浴びせた。

羽虫は思わぬ攻撃に驚いたようで、再び空に飛び立った。

オレは次の攻撃に備えて上空を見上げた。

「なんということだ……」

そのときにはもう後続の羽虫達が空を覆っていたのだ。

「覚悟を決めるしかないか」

パマーダすらトライデントを構えて臨戦態勢を取った。

そのとき、キラキラとしたものが上空から降り注いできた。

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