第56話 戦闘回避

ミョルニルがミラヤに到達した。

間一髪かんいっぱつのところでミラヤはアリジゴクのあごの射程から離れた。

その瞬間オレの身体に物凄い重さがのしかかった。

ミラヤは女の子だったがその身体は一回り大きく、オスの駱駝らくだ遜色そんしょくない。体重は600キロ近くあった。

やってしまったものは仕方がない。オレは片膝を突いて必死に耐えた。


ミョルニルにはほとんど回転が加わっていなかったが、ミョルニルにくっついたミラヤは丁度一回転してオレの隣に着地した。

プレッシャーから解放されたオレはその場に座り込んだ。

ミラヤは心配そうに俺の顔をのぞき込んでいる。

「おお、ミラヤ、大丈夫だったか?」

オレが立ち上がると、ミラヤは感謝の気持ちを表してか、オレの顔をペロッとめた。

「お前、結構重いんだなあ」

つい思ったことを口にしてしまった。気を悪くしたのか、ミラヤはオレの胸に頭突きをくらわせた。オレはまた尻餅をついた。


再び立ち上がってすり鉢状の砂の穴に目をやると、ゲネオスとアリジゴクが戦闘に入っていた。

ゲネオスはアリジゴクの大顎の攻撃を盾で防ぎながら、隙を見つけて剣を振るっている。

しかしアリジゴクの大きさは2倍ほどもあり、しかもゲネオスの足元の砂は足場が悪い。なかなかダメージが入らないようだ。

一方アリジゴクの攻撃は、着実にゲネオスの防御を突破し、ゲネオスは傷を負っていった。


加勢に回ろうと思ったそのとき、オレはふと気付いてしまった。

ゲネオスをミョルニルで回収すれば、この戦闘は終わるのでは?

オレはゲネオスに声を掛けた。

「おーい、ゲネオス。これからお前をミョルニルでこっちに引き上げる。そんなやつと戦うことはない」

「分かった。頼む」

オレは再びミョルニルを構え、回転を付けずに押し出した。


ミョルニルは真っ直ぐゲネオスに向かっていた。

そのときすり鉢のふちにいたオレの足場が崩れ、オレは前につんのめった。

一瞬身体からだが地面から離れたとき、オレは強い力で引き寄せられ、一気にすり鉢状の砂の穴の下へ飛んでいった。

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