第39話 船の下層

船は風のない中ようやく動き出したが、しばらくするとおかしなことに気付いた。

時間は丁度お昼頃。左側にあるはずの太陽が、いつの間にか右側にある。(注:ここは南半球です)

つまり元来た方向に向かって船が進んでいるのだ。

船長もそれに気付き、乗組員たちもざわついている。

拘束を解いた方の舵輪だりんを思いっ切り回しても進路は変わらない。

通常の舵輪を回しても駄目だった。

船長は再びまじない師の男と話をし始めた。


話が終わると船長がオレ達のところにやってきた。

「冒険者さんたちは船をモンスターから護ってくれるのが仕事だったよな?」

「ええ、そうです」

とゲネオスが答えた。

「船の上のモンスターであればいいんだな?」

「質問の意図がよく分かりませんが、船や船員が航海中モンスターにおびやかされるとき、それを護るのは我々の仕事です」

「それじゃあちょっと付いてきてほしいんだ」

船長はそう言うと、船室に向かった。

オレ達もそれに従った。


一番奥の船室に入ると、部屋の片隅に穴が空いており、下層につながる梯子はしごの先が見えた。

梯子を降りると通路があり、少し進むと鉄製の頑丈な扉に突き当たった。

船長が扉を解錠して進むとすぐに階段があり、その階段は途中折れ曲がりながら船の下層へと続いていた。

階段の途中にさらに鍵のかかった扉があった。

「厳重だな」

扉の先の階段を降りると、少し開けた空間に出た。

階段の反対側には今までよりもはるかに重々しい扉がある。

この扉は例のまじない師が呪文を唱えて解錠した。

いつの間にか船長は武装していた。

オレ達もそれを見てそれぞれの武器に手をかけた。

扉がゆっくりと開いた。

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